暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜紺色と藍色の追復曲〜
あの時あの場所で
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蓮葉の 濁りに染まぬ 心もて なじかは露を 玉とあざむく

――――僧正遍昭










「――――頼むぞ、リーリャ=A=カラシニコフ」

通信を切った相馬は、ふぅと短く呼気を吐き出した。

横浜市保土ヶ谷区。

まだまだ都市開発の手が伸びる余白のある街並みを車窓越しに眺めながら、少年にも青年にも見える男はゆっくりと今まで操作していた端末を閉じる。

別に、軍事基地のド真ん中に忍び込むとか、政府中枢に潜り込むとか、そんな大仰な任務ではないはずなのに、身体に力が入ってしまう。

それだけ彼にとってこれから行く場所は、きっとどんな所より緊張する場なのだ。

落ち着かない様子で相馬は、気を抜いたら揺すりそうになる膝を自制し、締まってもいないシャツの襟元を雑に緩めた。

移動するワゴン車に、運転手は存在しない。

ただでさえ世界中から常に狙われている彼は、もうそのレベルで人を信用できないでいる。これから見せる《弱み》を誰かに少しでも嗅ぎつけられたくない。

―――まぁ、こうして来ているっつー時点でみみっちい執着が露わになってるんだけどな。

自嘲気味に笑いながら、相馬はプラモデル感覚で組み立てた自動運転装置がハンドリングをする運転席の背もたれに足を乗っける。

なにぶん、かなりおざなりに初期設定(プリセット)したせいか、僅かなタイムラグがある、と研究者としての――――《鬼才》としての小日向相馬は分析し始めた。

途端、赤信号を認識するためのカメラ設定の最適解から、その情報をメインの運転システムに送るケーブルや基盤の配置、システムコードの余計な処理箇所。そうしたものが、既存の技術を置き換える新技術の形で、脳裏で更新され始める。

これが日常。

特殊能力、という訳でもない。いうなれば発想の転換。

小日向相馬という頭抜けた天才は、そもそも凡才が言う悩むという事象そのものを、そうそうしない。彼にとっての発想とは、なぜこんな簡単なことをできないのか、という一点に集約される。

だが、彼はソレを特別過大評価していなかった。

能ある鷹は爪を隠す、ということわざ通り、相馬は己の持つ可能性を正しく見つめ、それが世界に与える影響や衝撃を正しく識っていた。分かっていた。理解していた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()レベルでブッとんでいたら、そりゃさすがに気付くだろう。

自分がどれだけ異端か。

自分がどれだけ異常か。

自分がどれだけ異質か。

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