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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第八十六話 マリーンドルフ伯爵令嬢は遠征に反対のようです。
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ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフがラインハルトの遠征を知ったのは、元帥府の一隅の自身の執務室にて最近の帝都の動向報告書をまとめている時だった。
「何かしら、先ほどから少しあわただしいようだけれど・・・?」
端正な顔を上げたヒルダは少し考え込んでいたが、その訳はすぐに分かった。副官の一人であるテオドール・フォン・リュッケ大尉がヒルダに書類を持ってきたときにその訳を話したからである。
「イゼルローン要塞にローエングラム伯自らが遠征?」
ヒルダの形のいい眉が上がったが、その時には彼女は何も言わなかった。だが、リュッケが立ち去ると彼女の手の動きは止まり、眼は正面のマントルピースの上にある白磁の壺に留まっている。正確にはその壺の先にある自分の考えを見ていたのだが。
やがて彼女は決心したようにペンをペン立てに置くと、自分の席を立ちあがって上司の下に赴いたのである。あわただしい中だったがラインハルトはすぐにヒルダを執務室に通した。普段ヒルダが自分に面会を求めるのは、火急かつ必要不可欠な時だけだという事を既に理解していたからである。
だが、ラインハルトの端正な顔はヒルダの最初の数語を聞いた瞬間に険しいものに変わった。
「反対だと?」
信じられないという声音で満ちていた。ラインハルトは今回の遠征において反対を予期しないわけではなかったが、それは下級指揮官や彼の心情を理解できない一部の将官だけであると思っていた。ましてやその反対がフロイライン・マリーンドルフから出ようなどとは思ってもみなかったという顔である。
「はい。今回の遠征は閣下にとって利となるものはありません。」
「随分とはっきり言ってくれるではないか、フロイライン・マリーンドルフ。聡明なフロイラインにおいてはその理由も明確にしてくれるというわけかな。」
閣下こそ随分なおっしゃりようです、とはヒルダは言わなかった。彼女の物言いが若き元帥を不快にさせているという事は分かっていた。わかっていてなお言わずにはおれないのが彼女の性分だった。
「理由は三つあります。第一に今閣下が帝都を留守にすれば閣下の台頭を快く思わない勢力が閣下の追い落としを画策するであろうことです。第二に、イゼルローン方面における戦況はいまだこう着状態であるものの、今回の増援によって敵にさらなる増援の動きを与えかねず、結果として戦火が拡大してしまうことです。これは閣下の麾下に少なからぬ被害が及ぶこと、それがひいては閣下の勢力の減衰につながることを意味します。第三に――。」
ヒルダはここでためらうように口を閉ざした。
「第三に?」
ラインハルトがその先を促すように尋ねる。
「閣下の姉君であります、グリューネワルト伯爵夫人の身に危害が及ぶ可能性があるという事です。」
とたんにラインハルトの眉が跳ね上がり、部屋の空気が一気に引き
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