暁 〜小説投稿サイト〜
ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第八十六話 マリーンドルフ伯爵令嬢は遠征に反対のようです。
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 だが、とヒルダは思う。ラインハルトはそのような事を思って今の言葉を発したのではない。単に若き秘書官が部下の立場としてローエングラム元帥を案じたのだと思い、彼もまた、ローエングラム元帥として若き秘書官にいたわりの言葉をかけた、ただそれだけなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。わかっているのだけれど、少しだけ、ほんの少しだけヒルダには物足りなさを感じていた。そう思う事こそが、不適切甚だしいものであることはわかっていたのだけれど。
「あなたの職責を果たしてもらえればそれでいい。」
ヒルダは一礼して若き元帥の前から退出した。そうするほかに彼女にできることはなかったのだから・・・・。
「ねぇ。」
 ヒルダが廊下に出てくると、一人の将官が立っていた。そばかすの散った、けれど顔立ちは悪くはない栗色の髪をショートカットにした女性将官はルグニカ・ウェーゼル少将である。転生者でない女性士官学校出身者としては五指に入るほどの出世頭であった。彼女はフィオーナ以下の五万余隻の先発部隊には入っていない。ラインハルトの直属艦隊の前衛部隊を指揮する重任についていたのである。むろん人材豊富なローエングラム元帥府である。他に有能な将官がいないわけではないが、特にティアナが彼女を見込んで推挙していたからだった。
「あんた、何話してたの?」
このような冷たい眼で見つめられ、ぞっとするような低い声で話しかけられることなど、ヒルダにはない経験だった。
「何を・・・と申されますと?」


「何話してたかって聞いてんだよ!!!!」
ルグニカの怒声が廊下に炸裂した。


ローエングラム元帥の先ほどの態度を研ぎ澄まされた冷たさを持つ泉だとすれば、今の一喝は火山の噴火に匹敵する。その熱気がヒルダの全身を襲った。
「ここは元帥府だろ?ローエングラム元帥の側にいるべきなのは将官か副官だけだ。秘書官風情がここにいるべきじゃないんだよ。」
粘っこいような声だった。その眼、その声の後ろにあるものを感じ取ったヒルダは冷たい汗が背筋を伝うのを感じた。

憎悪、それのみだった。ルグニカ・ウェーゼルが発散していたのは。

ルグニカの素性については貧しい平民の出である。大家族であり食うに困るほどの暮らしぶりだったが、女性士官学校の設立を聞き、裸一貫で飛び込んだという。必死に勉学に励んで武勲を立てて将官になったのも仕送りを増やして家族を養おうとする心に他ならなかった。
そのような貧窮の家に育った彼女にとって、貴族は仇敵であり、いつか倒さなくてはならない存在と考えていることを今のヒルダは知ることはできなかった。
「ローエングラム元帥の秘書官として、私はただ閣下にお仕えしているだけです。」
平静さを装おうとして、かえって声が硬くなるのを自覚していた。
「お仕えねぇ。」
ルグニカは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ