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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 将官会議
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開闢以来の壮挙とか言っている。自画自賛すれば作戦案も洗練されるとでも思っているんだろう。意味ないぞ。

周囲もどこか醒めた様な表情をしている。満足しているのはロボスだけだ。フォークの演説に満足そうに頷いている。グリーンヒル参謀長が咳払いをして口を開いた。

「フォーク中佐の述べた作戦案の討議に入ろう。活発な提案と討論を行ってほしい」
なんか皆が俺の方を見ている。グリーンヒル参謀長もワイドボーンもだ。何でこうなるかな、知らないぞ、どうなっても……。俺はロボスもフォークも嫌いなんだ。グチャグチャになるからな。



宇宙暦 794年 10月 17日  宇宙艦隊総旗艦 アイアース  マルコム・ワイドボーン


フォーク中佐が作戦案を述べている間、ヴァレンシュタインは詰まらなさそうにしていた。手元のメモ帳に落書きをしている、カエルの絵だ。大きな腹の突き出たカエルと貧相な小さなカエルが描かれている。

大きなカエルには髭が描かれていた。ロボスのつもりか? となると小さいカエルはフォークか。思わず失笑しそうになって慌てて堪えた。グリーンヒル参謀長を見ると参謀長も顔を歪めている。どうやら俺と同じものを見たらしい。隣のヤンが俺を不思議そうに見た。慌てて顔を引き締めた。

参謀長が咳払いをした。どうやら始めるらしい。
「フォーク中佐の述べた作戦案の討議に入ろう。活発な提案と討論を行ってほしい」

皆がヴァレンシュタインを見ている。ヴァレンシュタインは迷惑そうな表情で俺を、そしてグリーンヒル参謀長を見る。参謀長が頷くのが見えた。ヴァレンシュタインは一つ溜息を吐くと右手を挙げた。
「発言を求めます」

誰も何も言わなかった。ロボス元帥もグリーンヒル参謀長も沈黙している。これからヴァレンシュタインとフォークの論戦が始まる。言ってみればグリーンヒル参謀長とロボス元帥の代理戦争の様なものだ。皆それが分かっている。微妙な空気が漂ったがヴァレンシュタインは気にすることもなく発言を続けた。

「その作戦案ですが狙いは悪くないと思います」
「……」
本当にそう思っているのか? そんな事を思わせる口調だ。フォークの顔が微かに引き攣るのが見えた。

「しかし先日、此処にいるワイドボーン大佐、ヤン大佐にも話したのですが敵がこちらの考えを見破れば危険な状況に置かれるのは同盟軍です。フォーク中佐もそれはご存じでしょう。そのあたりをどう考えているのか、答えていただきたい」

「敵がこちらの作戦を見破ると決まったわけではありません。ヴァレンシュタイン大佐の危惧はいささか度が過ぎるものと思いますが?」
小馬鹿にしたような表情だ。真面目に取り合おうとはしていない。大体今回の作戦が敵に見破られるなどとは考えていないのだ。対処法などあるわけがない。


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