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風魔の小次郎 風魔血風録
126部分:第十一話 武蔵の力その十一
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第十一話 武蔵の力その十一

 しかしこの時だった。もう一人の男が闘いの場に現われた。彼は。
「やいやいやい!」
「貴様は」
「小次郎君!?」
 武蔵と麗羅はその者の顔を見て互いに声をあげたのだった。
「気配を察したか」
「けれどここに来るなんて」
「麗羅、大丈夫か!?」
 彼は場に現われるとまずは麗羅の前に立ち風林火山を構えるのだった。その姿勢で武蔵に対して目を見据えていたのだった。
「俺が来たからには安心しろ。いいな!」
「僕はまだ」
「無理するんじゃねえ!」
 小次郎は己の後ろにいる麗羅にまた言った。
「その怪我で何が出来るんだ!無理に決まってんだろうが!」
「それでも僕は」
「言うな!」
 もうそれ以上は言わせなかった。
「ここは俺に任せろ。いいな!」
「小次郎君・・・・・・」
「今のうちに退け」
 今度はこう麗羅に対して告げた。
「いいな」
「・・・・・・有り難う」
 小次郎の心を受けて礼を述べた。
「済まないけれどこれで」
「ああ、行け」
「けれどその前に聞きたいんだ」
 麗羅はここで小次郎に問うてきた。
「何だ?」
「料理対決はどうなったかな」
 彼が気にしているのはそのことだった。
「それの方は。どうなの?」
「白凰の勝ちだ」
 やはり正面を見据えながらの小次郎の言葉だった。
「それは安心しろ。いいな」
「そう。それならよかったよ」
「わかったらさっさと行け」
 小次郎の言葉は続く。
「いいな」
「・・・・・・うん。それじゃあ」
 こくりと頷いて炎を出しその中に消える。こうして小次郎はあらためて武蔵と対峙する。しかし武蔵は何故かあまり戦意はないようだった。
「悪いがこれで終わりだ」
「終わり!?どういうことだ」
「こちらの事情だ」
 こう小次郎に述べるだけで退く気配すら見せていた。
「御前に言うつもりはない」
「へっ、二人潰してそれで満足とでもいうのか?」
「それなら貴様等全員倒す」 
 この言葉は本気だった。
「二人どころではなくな」
「俺もか」
「無論」
 気配自体はいつもと同じ強いものだった。
「だが今は退かせてもらう。これでな」
「へっ、じゃあこっちもこれで終わらせてもらうぜ」
 小次郎も武蔵に戦意がないことがはっきりとわかってここでは退くことにしたのだった。
「だがな。今度会った時は」
「倒す」
 武蔵の返答は一言だった。
「小次郎、貴様をな」
「兜丸と麗羅の仇は取らせてもらうぜ」
 小次郎は兜丸に何があったのかも気配で察していたのだった。それを察することができるということが彼が忍である何よりの証だった。
「その時はな」
「好きにするがいい」
 これ以上は言おうとしなかった。
「また会おう」
 
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