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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
第三十話 身体の傷、心の傷
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って言うか、日本慣れしていた感じがしたんだ。普通に買い物もできていたし。それに覚えてる?私の実家のお店の名前」

「確か、翠屋(みどりや)、でしたか?」

「そう。あの時、ミドリの字が(りょく)じゃなくて(すい)だって言ってたよね。ミッドでも漢字を分かる人は沢山いるけど、音読み訓読みを瞬時に判断できるのは、さすがに日本で育った人だけだよ」

「意識していなかったですね」

なのはの言う通り、日本育ちなら漢字の音訓読みは意識しなくても体感的に分かるが、外人でそれを理解するのは難しい。

「でも、決定的だったのは、お姉ちゃんが持ってきたキンピラゴボウなんだよ」

「へ?」

意外な事を言われて、アスカは間の抜けた返事をしてしまう。

「ど、どういう事ですか?キンピラが決定的って?」

訳が分からずに慌ててしまうアスカ。

「実はね、ミッドチルダにゴボウを食べる習慣ってないんだ」

「!」

アスカは、フェイトの言葉に絶句する。

「地球でも地域によっては、例えばアメリカとかはゴボウを食べる習慣がないの。日本で育った人なら食材に見えても、知らない人は木の根っこか、枝に見えるらしいよ」

フェイトの説明に、アスカはアングリと口を開けてしまった。

「お姉ちゃんが持ってきたキンピラゴボウを普通に食べているのを見て、たぶん日本人なんじゃないかなって思ったの」

最終的な答えを、なのはは言った。

ポカンとした顔のアスカだったが、次第に小さく震え始めた。

「………フ…」

「アスカ君?」

「フフッ、ハ、ハハッ、アーハッハッハッハッ!」

アスカは突然笑い出した。

だが、その声は苦しみと悲しみし満ちていた。

「なんて間抜けなんだ、オレは!ミッド人になったつもりで目を背けていたのに!思い出したくないのに!それでも染み着いた習慣は抜けてなかったってか!逃げていたのに、意味がねぇなあ!」

自嘲した笑い声が隊長室に響く。

狂気にも似た笑い声に、誰もアスカに近寄る事はできなかった。

ひとしきり笑いきったのか、アスカはグッタリとイスにもたれ掛かり、俯いた。

「高町隊長の仰るとおり、オレは日本人です」

下をむいたまま、アスカは告白した。自分が日本人である事を。

そして次のアスカの言葉に、全員が息を呑んだ。

「オレは……次元漂流者です」
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