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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十三話 イゼルローン要塞攻略作戦
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に二人の顔が渋くなった。

「敵の増援が二個艦隊有ったとします。駐留艦隊と合わせて三個艦隊、それらを排除しなければ要塞攻略は難しいんです。敵は要塞主砲(トール・ハンマー)を利用して要塞を防御します。簡単に艦隊決戦にはならない、つまり敵艦隊を撃破し排除するのは難しいんです。当然要塞を落とす事はさらに難しい」

「……こちらの遠征軍の規模が大きくなれば、帝国軍も増援の規模を大きくする……。イゼルローン要塞は落とせないという事か……」
ワイドボーンが呟く。グリーンヒル参謀長が大きく溜息をついた。

「イゼルローン要塞を落とすためには帝国の眼をイゼルローンから逸らす必要がありますね」
「逸らす?」
ワイドボーンが問い返してきた。グリーンヒル参謀長も期待するように俺を見ている。喰い付いて来たか……。

「逸らすと言ってもどうやるんだ、ヴァレンシュタイン」
「良い質問だね、ワイドボーン大佐。フェザーンを攻める」
俺の言葉に二人が息を呑んだ。

「本気か?」
ワイドボーンが小声で訊いてきた。おいおい緊張しているのか、らしくないぞ、ワイドボーン。グリーンヒル参謀長も驚きを顔に浮かべて俺を見ている。

「本気です。フェザーンは帝国と同盟の戦争の長期化を望んでいます。同盟が軍事行動を起せば必ず帝国に伝えるんです。だから帝国軍は早期に増援を送る事が出来るんです。イゼルローン要塞の帝国軍の戦力を固定するにはフェザーン方面で軍事行動を起し、帝国の眼とフェザーンの眼をイゼルローン要塞から逸らす必要があるでしょう」

「しかし、フェザーン方面で軍事行動を起すとなれば後々厄介な事になるはずだ。フェザーンが帝国と協力関係を密にする可能性もある。危険じゃないか」
汗を拭け、ワイドボーン。

「中途半端な軍事行動は危険です。だからこの際フェザーンを占領するんです。イゼルローン要塞を攻めると見せてフェザーンを攻める。帝国が驚いてフェザーン方面に出兵しようとしたとき、同盟はイゼルローン要塞を攻める……」
「……」
ワイドボーンもグリーンヒル参謀長も顔が強張っている。

「軍の動員は最低でも八個艦隊、いや十個艦隊は必要でしょうね。イゼルローン要塞に五個艦隊、フェザーン回廊に五個艦隊。成功すれば同盟は両回廊を占領し、帝国に対し圧倒的に優位に立てます。フェザーンの経済力も手に入る……」

「しかし、失敗したら」
「その場合は同盟の屋台骨が揺らぐでしょうね。それだけのリスクを背負うだけのメリットが有るか、それとも無いか。難しい判断ではあります」

ワイドボーンもグリーンヒル参謀長も顔を蒼白にしていた。まあ駄法螺だが不可能じゃない。しばらくはそれで悩むんだな。悩むのは良いが本当に実行しようとするなよ。失敗しても知らんからな……。




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