二話 隻腕の騎士と剣聖
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ぎた。いや、今もそれは有って困惑してるから余計に疲労感を感じる。
「そろそろ戻ってくると思うけど。
ラインハルト、遅いね」
ラインハルトはちょっとした急用があったらしく、何処かに行ってしまった。
行き際に、すぐ戻るからなんて言ってたけどなかなか戻ってこず、時間潰しに俺とエミリアはそこらを適当に歩いていた。
慣れない道を歩くのは楽しいけど、全く土地勘のない所をすいすいと進める訳もなく。周囲をきょろきょろしながら進む。
「ん、アレは」
視界の先、それを何と呼ぶのか。
それを目にした瞬間、俺の心はざわついた。
アレは────。
「この世界にも……そういうのは、あるんだな」
スラム街。生で見るのは初めてだ。
テレビや雑誌などで何回か見たことあるけど異世界でも貧困した所はあるようだ。
そりゃそうだ。裕福な暮らしもあれば貧しい暮らしもある。裕福な暮らしがある限り貧困の暮らしは無くならない。あって当然、とは解っていても実際に目にすると心の奥が締め付けられる。
「シロウ?」
俺の足は自然とスラム街に向かっていた。
エミリアの呼び掛けが聴こえた気がするけど俺の足は、俺の躰はスラム街を目指す。
そこは明らかに違った。
さっきまでの街並みとは違う。まるで区切りを付けられたように別の空間だった。
「ここは……」
違う。違う。違う。
目の前の光景を否定する自分。
それをあって当然と受け入れている二人の自分。
これは違う。だって、なんで……
吐きそうだ。
なんで、こんな。
「シロウ……?」
エミリアはこの光景を見てどう思っているのか。
この世界はこれが当たり前なのか。
「……ッ」
俺は走った。
────無我夢中に。
────ひたすらに走った。
────目の前の現実を直視できない自分に嫌気がさす。
────いつかの俺も、その光景を目にしたはずだ。これはあって当然の事だと。
────全ての人を救うことは不可能。故に、人は犠牲を払い。100の内の1を切り捨てる事で人間は成り立っている。
────でも、だからってそれは……。
────これは俺の我儘だ。全ての人を救いたいなんて思っている無垢な少年の願望だ。
────少しでいい。ここにもあるなら見せてくれ。
ただ、ひたすらに願う。
そして────。
「ん、兄ちゃん。見慣れねぇナリだな」
その声で、俺の心は救われた。
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