暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
[1/9]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
新しいプレイヤーアバターが登場する際の独特のエフェクトに、ファナハンは珍しい、と思ってしまう自分に気付き、自嘲的に口許を歪めた。

影妖精(スプリガン)の総人口は、ALO九種族の内でダントツに少ない。

別に、造り出されるアバターが総じてブサイクだとか、そういう低俗な理由ではない。

弱い。

それ以上でも、それ以下でもない。

スプリガンが得意とするのは幻惑と宝探し関連。

幻惑は、主に惑乱魔法と支援魔法がふんだんに使える音楽妖精(プーカ)にお株を奪われ、トレジャー魔法も冒険の際の便利グッズ扱いだ。

ゲーマーというのは、おしなべて効率主義なものだ。そりゃ確かに見た目やカラーリングで選ぶバカもたまにはいるが、それにしたって進んで不便な道を選ぶヤツはいない。

いてもいなくても気にされない。気にされない現実も、もはや気にしない。

それが、スプリガンの現状なのである。

「…………」

ミシリ、とスプリガン領主の握りしめた拳が鈍い音を立てた。

スプリガンを選ばなかった数多のプレイヤー達に、怒りを向けるのは筋違いだ。逆の立場ならば、自分だってこんな底辺の種族などなりたくはない。もっと堅実で手堅い――――それこそ、属領者の数ならばALO最大規模の猫妖精(ケットシー)にでもなるだろう。

プレイヤー数が増えなかったら、横の繋がりも広がらない。

普通、種族の首都といえば、プレイヤーから上納された《税金》をもとに、勢力の拡大や他領――――鍛冶妖精(レプラコーン)などと大規模な交易を行うものだ。だが、ただでさえ少ない属領者を手放せないスプリガンでは、無理な税率アップは自殺行為になる。ゆえに、一般が喜ぶような大々的なイベントも興せないという、負の連鎖が発生しているのである。

―――これが状況の打破に繋がれば……。

天空を点々と埋める飛竜。そして、シナルを囲む森の木々の合間からこちらを射抜く巨狼の瞳。

それらを視線を巡り見ながら、ぼんやりと男は思う。

彼らに向けるこの怒りが、理不尽なことは分かっている。

分かっているが、思わず叫びたくなるのだ。

この差だ。

首都に引きこもるスプリガン。それを取り囲むケットシーご自慢の陸空軍。

まるで両者の有様を写した風刺画のようではないか。

皮肉めいた思案を打ち切り、ファナハンは再度空中をゆっくり降下してくる新米プレイヤーを見守った。

こんな修羅場の最中に生まれるなんて、これはまた出ていくかな。

そんな自虐を思う領主の目の前で、首都(シナル)の唯一の名所である《アクシス・ジグラート》の天頂部に降り立つ新人。

夜、環境光(ガンマ)がなくなってくると自動的に灯されるかがり火に照らし出されたそのプレイヤーは、小柄な|
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ