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レーヴァティン
第一話 夢幻の世界へその五

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「マスターが淹れたのは」
「だからそれはな」
「油断していないからか」
「そうなんだよ、だからな」
「剣術のことはか」
「というか勝負ごとはな」
 そうしたこと全般がというのだ。
「やらないから実体験では言えないにしても」
「油断のことはか」
「俺もそう思うさ」
「まずくなるか」
「そして負けるな」
「そういうことか」
「ああ、だから他の世界に行ってもな」
 マスターもこの話は聞いていた、それで彼も言うのだ。
「油断したらな」
「負けるな」
「それで終わりだよ」
「無双だの無敵だのな」
「ないさ、まああんたもな」
「俺もだな」
「若し他の世界にいってもな」
 先程の話では抜け道を通ってだ。
「油断するなよ」
「幾ら強くてもか」
「負けるからな」
「そうした世界は負けたら終わりなのが常だな」
「サバイバルな世界でな」
 剣と魔法の世界なり死闘が続く世界なりだ、とかく物騒な世界に行ってしまうことがそうした展開の常だというのだ。
「若し負けたらだ」
「命自体を失うな」
「そんな無敵の人間はいない」
「全くだな」
「異常に強くて頭もよくて人望があって奇麗な妹からも慕われている」
「無敵だねえ」
 そんな人間の話を聞いてだ、マスターは笑って述べた。
「もう最高だね」
「そんな奴はいない」
「人間は誰もが人間でね」
「能力に大差がない」
「じゃあ大谷は何かって話になるとな」
 日本ハムファイターズの選手だ、ピッチャーとしてもバッターとしてもその能力の高さは尋常なものではない。
「あくまで野球で、だからな」
「そうした万能選手はな」
「いないな」
「どんな世界にもな」
「人間は神様じゃない」 
 久志はこうも言った。
「そんな奴はだ」
「全くだよな」
「いる筈がないんだよ」 
「あんたの言う通りだよ」
「ましてそんな風になってもな」
 久志は先程話したその何でも持っている人間の話をまたした。
「何が面白いのか」
「自分だけが無敵でもだね」
「有り得ないしだ」
「面白くもないっていうんだね」
「勝ってばかりじゃないのが面白いんだろ」
「だからあんたは負けてもか」
「負けたら悔しいさ」 
 そう思うことはだ、久志も認めた。
「やっぱりな。けれど勝ってばかりでもな」
「面白くない」
「そんなことは有り得ないしな」
「どの世界でもだね」
「ああ、剣術は強い奴はどんどん出て来て」
「やられちまう」
「そういうものだ、昨日も負けたしな」 
 久志は笑って実際のことも話した。
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