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自然地理ドラゴン
二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第17話 太ましき町人
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している相手しかその背に乗せることはないと言われています。残念ながら私はまだ会って日が浅すぎる。難しいのではないですか」

「へー。そうなの? シドウ」
「うん。そういうしきたりがあったのは本当らしいよ。アランさんはよく知ってますね」
「そう教わったことがありますから」

「でもそれはまだドラゴンが沢山いたころの話です。母さんからは、もうそれに 囚とらわれなくていいと言われていますよ。『人間がそれで助かるのであれば、喜んで乗せるように』と。俺はアランさんを乗せて飛ぶことに全然抵抗はないです」

「おお、そうなのですか。それは嬉しいですね。機会があるかどうかはわかりませんが、そのときはぜひ」
「わたしも空は飛んでみたいと思うなー。気持ちよさそう!」

 三人でそんな会話を交わしていると。

 ――お。

 前方から吹いてくる穏やかな風。
 シドウはその中に、耕された土が持つ独特の匂いが含まれてきたことを感じた。

「畑の匂いが少しする。もうだいぶマーシアの町が近づいてきているみたいだ」
「えっ? わたし全然匂わないけど?」
「ふむ。私も特に匂いませんね」

 ティアとアランが不思議そうに返す。
 どうやら、匂いに気づいたのはシドウ一人だけだったようだ。

「俺、少し鼻がいいみたいなので」
「そうなんだ? 半分ドラゴンだから?」

「そういうことじゃないと思うけど……。人間の範疇でいいというだけだと思うよ。だいたい、ドラゴン姿だったら人間とは比べ物にならないくらい鼻が利くようになるから」

 基本的にドラゴンは鼻の利くモンスターである。
 シドウもドラゴン姿になれば、母親や兄弟たちと同等の嗅覚を持つことができた。

「変身するとどのくらい嗅覚が鋭くなるのですか?」
「そうですね。知っている人、例えばティアだったら、あの湖くらいまで離れて隠れていても、体の匂いで『ティアがいる』と判別可能だと思――」

 シドウは右方向やや遠くに見えている大きな湖を指さしながら、そう説明した……
 と同時に、ティアの荷物袋がシドウの顔に命中していた。

「俺、なんで叩かれたの」
「ヘンタイ!」

 ぷいっとそっぽを向いてしまうティア。
 それを見て、アランが小さく吹き出した。

「やっぱりシドウくんは色々駄目なようですね」



 * * *



 少し歩いていると、眼前の景色に明らかな変化が起きた。

「あ、シドウ。あれ、全部畑だよね?」
「たぶんそうだよ」

 いつのまにか機嫌を直していたティアの質問に、シドウは答えた。

 マーシアという町は、『大陸でもっとも進んだ農業技術』を持っているとされている。
 進行方向の視野左半分に大きく広がる、畑。
 模様
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