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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
朝露の少女
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居間(いま)の明かりを消し、寝室の壁に付いたランプの明かりだけが部屋を(とも)していた。

少女がベッドを1つ使っているので、もう片方のベッドに2人で寝ることにした。寝室のランプも火を落として、2人はベッドに横になった。

キリトは色々と妙な特技があるのだが、寝つきの良さもそれに含まれるだろう。アスナが少し話をしようと横を向いた時には、既に規則正しい寝息を立てていた。

「もう」

小声で文句を言い反対側、少女が眠るベッドのほうに向き直る。薄青い闇の中、黒髪の少女は相変わらずコンコンと眠り続けていた。今まで意識的に彼女の過去について考えないようにしていたのだが、こうして見つめていると、どうしても思考がそちらのほうに向かってしまう。

親なり兄弟なりの保護者と一緒に今まで過ごしていたのなら、まだいい。だが、仮にたった1人でこの世界にやってきて、2年間を恐怖と孤独のうちに送っていたのなら、それはわずか8、9歳の子供には耐え難い日々だったろう。自分ならとても正常な精神状態を保てたとは思えない。

ひょっとして………。

アスナは最悪の事態を想像する。もし、あの森の中で彷徨(さまよ)い、昏倒(こんとう)してしまったのが、少女の心の状態に起因(きいん)するものだとしたら。アインクラッドにはもちろん精神科医などはないし、助けを求めるべきシステム管理者もいない。クリアには最低あと半年はかかると予想され、それも自分やキリトの努力だけではどうにもならない。今キリトとアスナの2人が前線から離れているのも、1つには2人を含む一部プレイヤーのレベルが突出しすぎ、バランスの取れたパーティー編成が難しくなってきているという理由もあるのだ。

少女の苦しみがどれほど深いものであっても、自分がそれを救ってあげることなどできない。そう思うと、アスナは不意に耐え難い胸の痛みに襲われた。無意識のうちにベッドから離れ、眠る少女の(そば)まで移動する。

しばらく髪を撫でていた後、アスナはそっと上掛けをめくり、少女の隣に横になった。両腕で、小さな体をギュッと抱きしめる。少女は身動き1つしなかったが、どことなくその表情が(やわ)らいだような気がして、アスナは小さく囁いた。

「おやすみ。明日は、目が覚めるといいね」

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