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SAO−銀ノ月−
第百二十五話
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体中を駆けめぐるような感覚に襲われる。

「今日は……お客さん、来なさそうね」

「……ああ」

 壁に寄りかかってコーヒーを飲む俺たちの見解は、今日は開店休業だろうと一致していた。かく言う俺たちとて、今日はクエストに行くような気分にはなれなかった。何故なら――

「本当に……いなくなっちゃったのね……」

 ――先程、終わらせてきたからだ。ユウキの……紺野木綿季の葬式を。当然ながら現実世界で執り行われた葬式は、俺たちを始めとしたALOプレイヤーたち数百人が参列し、ユウキの親戚だという人物を驚かせた。それから居合わせたプレイヤーたちと、ユウキや《絶剣》の話題について盛り上がった後、導かれるようにこのALOにログインしてきていた。

 そんな葬式のことを思い出しているのか、寂しげにコップの中身を見るリズだったが、その手は自分でも気づかないほどに震えていた。

「…………」

 火葬されていく紺野木綿季の肉体を見て、ユウキは本当にいなくなってしまったと、葬式に参列した俺たちは再確認させられた。そして俺の脳裏には、ユウキのアバターから命が抜けていく瞬間がフラッシュバックし、彼女との二度目の別れを告げていた。

「ねぇショウキ。あの子……最期に、なんて言ってたの?」

「ユウキは……最期には……」

 ――死にたくない死にたくない死にたくない! まだここで生きていたいよぉ……――リズからの問いかけで、彼女から聞かされた言葉が蘇る。しかしその言葉は、彼女が誰にも知られたくない本音であり、俺が軽々しく口に出していい言葉ではない。

「頑張って、ここで生きた」

「頑張って生きた……か。ユウキらしいわね」

 ならばユウキから伝えられた最期の言葉は、彼女がこの世界を楽しんでいたのだという証明の言葉。遺言にも似たその言葉に対して、リズは小さく微笑んだ。

「ショウキ……あんたはいなくならないでよ。死ぬのなんて……ただ悲しいだけなんだから……」

「…………」

 悲しげにそう懇願するリズの瞳には、恐らくSAOで死に別れた者が映っているのだろう。どんな声をかけるべきかを迷っている間に、リズが唐突に、コップに入っていたコーヒーを一気飲みしていた。

「……なんてね。さ、この話は終わり、終わり!」

 そして空になったコップをアイテムストレージにしまい、先程までの雰囲気は嘘だったかのように、あっけらかんとこちらに笑みを見せてみせる。しかし笑みと言ってもいつもの笑顔とは違う、何かを隠したかのような無理やりな笑顔であり、本人もそれを自覚していたのかすぐに顔を背けていた。

「リズ」

 そしてリズが目を背けている隙に、俺は改めて彼女の姿を目に焼き付けていく。頼まれなかろうが、リズから絶対に離れてやるも
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