暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/Flood myth
第二話『幽玄の奏者』
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が、兆仕の体を支えていた為だ。

「――まだ傷が痛むか、仕方あるまい。致命の傷を自ら広げるような真似をしたのだ、寧ろその程度の影響で済んで僥倖と言うべきだろうよ」

「……よくもまあ、そんな状況からここまで持ち直したものだと、僕は自分を褒めてやりたいね」

「阿呆。我ら人外のような存在でもあるまいに、一日や二日で致命の傷が自然回復するものか。その治癒は、我が力の一端よ」

 呆れたように言うバーサーカーはその尊大な言葉と裏腹に、丁寧に兆仕をベッドに下ろす。やなり異端とはいえサーヴァントと言うべきか、か細い男一人の体重程度、いとも簡単に支えられるらしい。
 召喚当時は持っていた鉄剣も、今は持ち合わせていないらしい。霊体になれるのだから同然といえば当然なのだが、剣は消しているのだろう。

「……先に言っておくけど、僕は本来聖杯戦争に参加するつもりは無かった。聖杯戦争についてなんて、人並みにしか知らない」

「とうに知っておるわ。あの状況から察せぬ方が愚かしいというものよ、対策も考えておる。監督役に会えばよい」

 聖杯戦争にはそれぞれ、それを監視する役目を担う監督役が一人派遣される。その原則は如何に本来『起こり得るはずのない』聖杯戦争といえども揺らぐことは無く、きちんと存在している。

 京都市伏見区、伏見稲荷神社。その本殿に、この第八次聖杯戦争の監督役に任命された者が配属されている筈だ。

「お前、本当にバーサーカーかよ。狂戦士には見えないぞ」

「狂戦士のクラスではあるが、何も知性が無い訳ではない。我にとっての正気――それは汝ら人間の観点から見た場合の狂気なのだからな。お前達人間によって創られたこの戦争に於いて、我が『狂っている』と断ざれるも道理よ」

「成る程……人間からすれば、人間じゃないお前の言動は狂っている、と。そういう解釈も出来るのか」

「あぁ、傲慢な事だ」

 忌々しげに呟くバーサーカーから視線を外し、付けっ放しにされていた腕時計を確認する。召喚の儀式が行われたのは深夜4時だった筈なので、18時と言う事は……約14時間。半日以上眠っていた訳か。
 窓から外を見れば、夕日が美しい京都の街並みを照らし、今にも山の向こうへと落ちてこうとする。茜色の輝きに目を細め、それでも尚強烈な陽光に堪らず手で両目を覆い隠した。

 カーテンを閉めて、部屋に視線を戻す。この工房の主人たる魔術師は、既にバーサーカーによって葬られた。この工房に住む者は今や、兆仕とバーサーカーのみ。

「……支度をする、手を貸せ」

「クハハッ!お前も物怖じせぬな、我を小間使い扱いか。かつての神々が今の我が身を見れば、なんと言うことやら」

 口ではそう言いながらも、バーサーカーは兆仕の差し出した手を取り、彼に肩を貸
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ