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俺の四畳半が最近安らげない件
忘年会の誤算
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『えー?でも呼んでおいて断るのも≪縄ノ外≫に失礼だしなぁ』
「不吉なうえに聞いた事ないシコ名だな。そいつ番付は」
『序二段だけど?』
「幕下以下じゃねぇか!」
『体格は幕内レベルだぞ!?』
「それが一番駄目なんだけど!?俺の話聞いてた!?」
『何とかなるって!』
「なるか―――!!」
叫んだ時には電話が切れていた。…俺の周りにはこんなのしか居ないのか。
「……中里」
「……なんか」
「……次は力士だとよ」
頭を抱えて突っ伏した中里。
「何が本格ちゃんこだよ…もうちゃんこ鍋置くスペースねぇよ…」
「ちゃんこ鍋、宙に吊るか」
「ははは…あ、また携帯鳴ってら」
着信は『大原』。俺は緩慢な動作で携帯を手に取った。
「…荒木だ」
『……すまん』
常に声がでかい大原が、いやに小声だ。ぞわり、と厭な予感が背中を伝う。
「やっぱり力士に断られた、とかならむしろ朗報だが」
云ってみただけだ。このタイミングで謝罪から始まる会話に朗報が含まれているわけがない。
『……力士、増えた』
「――何やってんだお前ぇ!!あんな体積のものがどうやって易々と増える!?」
『し、仕方ないだろ!?増えちゃったんだから!!』
「どうやってだよ!細胞分裂じゃなかろうな!?」
『するかっ!…縄の外が「知らない人達のパーティに一人で行くの不安過ぎ」って力士仲間を誘ったんだよ』
「何人!?」
『……3人程』
無理だよ馬鹿野郎どうして阻止しなかったっていうか力士嫌がってたなコレ断るチャンスだったよな何やってんだとまくし立てたが、途中で電話は切れていた。
「力士が…4人か」


モサ男8人ラガーマン約10人滑川の彼女一人、そして力士4人。


中里に伝える気力も残っていないし、中里も聞いてこない。俺たちは生ぬるいため息を何度もつきながら、窓の外を眺めた。
「何だよ、一人が不安過ぎって…力士のくせにメンタル豆腐かよ」
「全くだ。そんなことでは幕内入りは遠いぞ縄の外よ」
「なんちゅうシコ名だよ…不吉過ぎんだろ」
ひとしきりぼやいていると、いつしか外は一面の銀世界と化していた。
「あぁ…午後から降るとか云ってたな」
「……雪、か」


―――雪。…そうか、雪。


「中里ぉ!立ち上がれ!!」
俺は座布団を蹴って立ち上がった。その『思いつき』は雷のように俺の脳を打ちすえ、天啓のように響いた。何も分からずおろおろと俺に続いてコートを羽織って外に出る中里。俺は中里に、壁に立て掛けてあったスコップを手渡した。
「荒木…?何だこれは」
「これから夜を徹し…かまくらを作る!!」


今にして思えば天啓どころか、こういうのを『魔が差した』というのだなと断言できる。
「かまくら作るんだよ、庭中に!」
「ちょっと待て、
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