暁 〜小説投稿サイト〜
俺の四畳半が最近安らげない件
忘年会の誤算
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
別だ。これで確実に、明日の出席者が一人減るのだから。
「そんなら忘年会に出てる場合じゃねぇな、こっちのことは気にするな」
『何云ってんだ?出るよ。彼女と二人で』


―――は?


『皆に報告もしたいし♪』
「報告だと」
『一人くらいいいだろ♪じゃあな』
またしても云いたい事だけ云いまくり、電話は切れた。
「……何て」
中里は諦観を含んだ声で呟くように訊いてきた。
「……また増えた」
「……何人」
「一人。ただし、女だ」
「……うっわぁ」
全てを察し、中里は天を仰いだ。
「あいつ、また振られるな…」
そりゃな…貴重な年末の休みに、モサ男とラガーマンがごった返す四畳半に鍋と共にぶっ込まれる…という大惨事につき合わされたら二度目の破局は約束されたようなもんだ。
「教えてやったほうがいいかな」
「これ見よがしなリア充アピールに、女を使う方が悪い。爆発四散して頂こう」
中里の、眼鏡の奥が見えないのが怖い。…しかしまじに困った。もう既に『ちょっと手狭』とかそういうレベルではない。何人来るのか分からんラガーマンと滑川の彼女合わせて恐らく20人弱。俺は嘗て、こんな量の友人知人を実家ですら招待したことがない。実家で、年始に親戚が集まる会をやるが、それが従妹の子供合わせて20人位。本家の大広間ですら手狭感がある。
「なぁ、例えば。例えばだ。この四畳半に20人入るとしたら…」
中里は少し考えて、顎にあてた手を外した。
「一畳につき4人強」
「…強?」
「だってそうだろ、4人だと18人しか入らん。なんとか詰めてあと二人分のスペースを作ってもらうしかない。炬燵は邪魔だから撤去だ」
「炬燵撤去!?何それ、あいつら何の為に俺ん家に集まるの!?」
叫んだ瞬間、携帯が再び震え啼き始めた。…今度は何だ!
「……荒木だ」
『ははは何お前、刑事かよ』
「こっちは今大変なんだよ、用件だけ簡潔に云え、大原」
『明日の鍋、コンセプト的には≪ちゃんこ鍋≫なんだよな!』
…良かった、今度の電話は人が増える相談じゃなさそうだ。さすが食いしん坊の大原。
「ちゃんこ鍋スープが実家から送られてきたんだよ。でも拘ってないぞ、何か希望ある?」
自分でも声が少し優しくなるのが分かる。しかし。
『本物の力士が作らないと、ちゃんこ鍋って云わないんだぞ、知ってるか』
「あー…ははは、いいじゃんその辺は」
『はははは!!呼んでおいたぞ♪』
「あはは、何をだよ」
『力士』


……は?


「…今、何て?」
『力士。呼んだぞ。一緒に食おうぜ、本当のちゃんこ鍋』
「ちょ…何でそういうことすんの!?人数ギリギリって話、聞いてたのか!!」
『一人くらい平気だろ』
「平気なわけあるか!!一人ったって力士だろ!?一般人だと何人分だよ!!
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ