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SNOW ROSE
乙女の章
].Chorale(Ich freue mich in dir)
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「シュカ、良いな?」
「はい、ヴェルナー神父。」
 ここは聖グロリア教会礼拝堂。神の聖別されし緑深きトレーネの森の中へ建つその場所は、この日、大司教を始めとする司教達と国王ハンス、その側近であるスティーヴンスに元老院と貴族院からも数名の者が訪れていた。
 シュカと三人の神父、それにシスター達の奏でる神へ捧げし音楽を聴くためである。
 その日シュカはオルガンを奏し、神父達は弦楽を、シスター達は管楽を、もう一人の乙女であるドリスはクラヴィコードを担当していた。
 本来はチェンバロを使用するが、それはシュカのものだと言い張ってドリスがクラヴィコードに変更させたのである。
 この捧げ物は特別な演出が用意されており、曲目の大半をラノン、シュカ、ドリスの書いた新しい作品で埋めていた。
 このことを事前に聞いていた大司教は大いに驚き、それと共にその楽の音を心待ちにしていたのでもあった。
「では、始めにオルガンによる讃美歌とその変奏曲を…。」
 シュカがそう告げてオルガンの鍵盤へと指を滑らすと、まるで虚無の中へ光が差し込むような感覚に聴くものは囚われた。
 一曲一曲はさして長くはないが、そのどれもが明るく晴れやかな色彩を放ち、その響きの美しさは他に類を見ない程であったと伝えられている。
 その演奏が終わると、次に合奏のみで“グロリア・ソナタ”が数曲奏され、今までの解釈とは違った演奏に皆は驚嘆させられたのであった。
 しかし、驚きはこれだけでは済まなかった。
 続けて演奏された合奏、オルガン、ソプラノ・ソロによるカンタータと神聖歌曲集はその大半をラノンが、その一部をドリスが、そして歌詞は総てシュカが書いた真に新しき歌なのであった。
 ソプラノはドリスが歌ったが、彼女の美声に皆が酔しれたという。
 目を見張るばかりの音楽で、大司教始め司教達さえも感嘆の息を洩らし、一音も聞き漏らすまいと息を凝らしていたのであった。
「大聖堂ですら、ここまで優れた楽士はいない…。」
 演奏が一旦休止したとき、大司教は思わず呟いた。周囲に座っていた司教達さえ、口々に演奏を讃える言葉を紡いでいた。
 しかし、その中で一人だけ演奏を貶す者がいた。
「中々ではあるが、所詮は素人の集まりではないか。我が楽士達程ではないな。」
 腕を組んでそう言ったのは、あのヴィンマルク卿である。
 その呟きは、近くにいた国王ハンスの耳へと届いた。ハンスはヴィンマルク卿へと視線を移して彼に言った。
「ほう…この者らよりも優れておると?ぜひ拝聴したいものだな。」
 国王ハンスに言われて、ヴィンマルク卿は悪びれもぜず、あのいやらしい笑みを溢して若き王に言った。
「王よ、それは光栄に存じますな。」
 だが、ハンスは立て続けにこう言葉を付け足したのだった。
「だがヴィンマルク卿
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