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魔王の友を持つ魔王
§XX-新年と元旦と魔王様
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「何遠い目してるの?」

「なんでもない」

 言えない。「まさか女子と二人で初詣とかいうギャルゲ的イベント、僕がする日が来るとは思わなかった」なんて口が裂けても言えるわけがない。空気を読んで後から行くといって義母と義妹とは別行動になってしまった。正直女子と二人っきりとか恥ずかしいんですけど。コミュ障系引きこもりオタ神殺し風味舐めんな。

「変なの」

 そう言って隣で笑う恵那。雪の降る中、二人以外に歩く人はいない。それが黎斗の緊張に拍車をかける。とりあえず冷静になろうと車道を見れば渋滞する車の列。黎斗達の目的地まで、ご丁寧に繋がっている。

「歩けばいいのにねー」

 その光景を見ておかしそうに恵那が笑う。自宅を出た時に自分たちを追い越した、と思しき車を神社手前(ここにきて)で追い越してしまったのだからさもありなん。というかどんだけ混んでるんだこの神社。

「まー田舎は車社会だからねー。車使う癖がついちゃってるのさ。第一こんな雪で歩くのなんて僕らくらいでしょ」

「そうかな?」

「そうだって」

 くだらないやりとりで笑ってしまう。少し、緊張が抜けた気がする。

「大体なんでコートの下、巫女服なのさ」

「一応初詣に行く以上はね。ぴったりでしょ?」

 確かに。似合っている、という意味でもTPO的な意味でもあっている。

「……いや、ある意味あってないのか?」

 主に本職と間違われる的な意味で。なお、この場合の本職とは初詣運営側の巫女、というニュアンスであり媛巫女とは別物であるとする。

「……わかんなくなってきた」

「だいじょーぶ。れーとさんが意味不明なのは今に始まったことじゃないから」

「さり気にひでぇ!?」

 黎斗の叫びが空に響く。うるせぇよ、と言わんばかりにコハクチョウが飛んでいく。粉雪が舞って、太陽が射した。なんとなく良い一年になる。そんな予感のする、新年一日目の昼の出来事。
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