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俺の四畳半が最近安らげない件
ファラオの案内人
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うねぇ」
「…任せたというか…」
「大人ふたりが墓陵の上で下郎がどうとか云いながら飛んだり跳ねたりしたのも、まずかったですね」
「…それ以上はやめておこうか。色々おかしくなる」
俺が脱出プランをモヤモヤと練りながら、宙を睨んでいると、ファラオが不安げに声を掛けてきた。
「……ひょっとして、脱出手段はない……とか?」
「―――あるには、あるが」
「なんだ、作ってたんじゃないですか!!」
俄かにハイになったファラオに、俺は槌と鑿を渡した。
「……えぇっと、これは?」
「王妃の間、あるだろ?もっと下の方に」
「……はい?」
「あそこの床の一部に、石灰岩を使った」
「………」
「女性を安置する部屋だから美しさ重視で!とか色々理由をつけて無理くり大理石のレンガを使い、その中の一つを石灰岩にすり替えたんだ」
「ちょ、待って厭な予感が」
「石灰は、もろいから掘りやすい。石灰の下は地下だ。そこからスコップで掘り進み、地上に出る」
「な、なるほど!頼みましたよ設計士」
「……俺一人だと、2カ月はかかる。そして俺が随所に仕込んだ食料、持ち込まれた食料、ファラオの副葬品を合わせて」
「まさか…一人分換算でギリ2か月分…とか?」
俺は重々しく頷いた。…実際はもう少しあるが、こいつには危機感を持ってもらおうと思う。
「石灰は俺がやろう。土を掘り進むのは交代だ。目標、一カ月!!」


実際、脱出は1カ月かからずに済んだ。


ファラオが思っていた以上に戦力になったのだ。慣れないうちはスコップの扱いは酷いものだったが、生まれつきの膂力はちょっとしたものだったらしく、コツを掴んだらすぐに俺と同じレベルで掘れるようになった。さすが、伊達に神の生まれ変わりを名乗っていない。と素直に感心しながら脱走した。
そして俺は今。
意外にも、元いた町からそんなに離れていない場所に住んでいる。
流石に元の家にそのまま戻るのはまずいが、元々ここいらは同じような顔の奴ばっかり住んでいるし、この間副葬された設計士に似たかんじのやつが増えても誰も気が付かない。
そこで俺は家族と示し合わせて、別れ際にファラオに貰った副葬品を元手に家を購入した。そして未亡人扱いの妻と再婚する体で元通りの所帯を構えた。

ファラオの方は国外に亡命成功したらしいのだが…ファラオ兄弟が仲良しというのは本当だったらしく、あれから一月足らずで王宮近辺の街中で、度々ツンタカアトンの亡霊が目撃され、城下の民を震撼させた。
王宮の外れで兄と二人で壁画のモノマネをしているのを目撃された時などは『新ファラオが旧ファラオの呪いに蝕まれた』と、色々な人々を不安に陥れたものだ。
……何やってんだ、あの王は。

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