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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
X 6.13.AM11:14
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厄介な仕事ばかり僕に押し付けて…自分で遣れば良いのに…。」
「え…?キヌさん、何か力があるんですか?」
 私が不思議そうに問うと、櫪氏は半眼になってこう言った。
「何も聞いてないようだね…。大伯母様は、僕と同じ位の力があるんだよ。以前は僕もかなわない程だったんだ…。」
 初耳だ…。まぁ、それを自慢気に話すなんてことは無いにせよ、だったら櫪氏本人をわざわざ呼び寄せなくてもなぁ…。私はてっきり本家の弟子でも呼んでくれるとばかり思ってたんだが…。それが蓋を開けたら…当主自ら御出座しなんて…。普通だったら、仕事料なんて私の支払える額じゃないんだ。
「ま、この家じゃ僕でも梃摺るかも知れないけどねぇ。」
 私が頭の中で夢中で金額を弾き出している最中、櫪氏はふとそう呟いた。
「貴方が…梃摺る?」
 私は首を傾げて聞き返した。藤崎の話によれば、櫪氏の力はかなり強い。その彼が梃摺ると言うことは、ここにある何かは、相当な力を持っていると言うことなのだ。
「あぁ…ここ、何か惨事があったね。それも…それを隠蔽してあるなぁ…。」
「え?そんな話…調査しても出てこなかったですが…。」
「それだけ巧みに隠してあるってことさ。」
 櫪氏がそう言った時、米沢さんがお茶を運んで来てくれた。櫪氏は米沢さんにお礼を言ってお茶を啜ると、他愛もない世間話を始めたのだった。ま、米沢さんに聞かせるわけにはいかないからな…。
 米沢さんが出ていったのを確かめると、私達は話を再開したが、直ぐに話を終らせたのだった。
「さて、今日はこれでお暇しよう。僕は大伯母様の所へ居るから、何かあったら直ぐに連絡をしてくれ。夜中でも構わないから。そろそろ…何か起きそうだと大伯母様も言っていたが、僕もここへきて分かったよ。大事にならねば良いが…。」
 そう言った彼の表情は固かった。一体…此処で何が起きると言うのだろう?櫪氏はそれ以上は何も言わず、静かに部屋を出ていったのだった。
 一人になった部屋の中、私は櫪氏と話たことを如月夫人に告げるかどうか考えていた。夫人にはその“何か"は見えてないのだ。感じてはいるかも知れないが、それが異質なものだとも断定出来ない程だろうし、館にいる人間は七海さん以外、恐らくはっきりと見た人はいないだろう。
 ここまできて私は、不意にとある疑問にぶつかった。

- 何故…僕には見えたんだ…? -

 私は外来者なんだ。同じく外から入った如月夫人には見えず、使用人達にも見えてないというのは、一体どんな理由があるんだろう?
「京の影響か…?」
 そう呟いて苦笑した。だが、一つだけ理由らしきことは思い浮かぶ。単純に考えれば、私をここから追い出したいのだ。“何か"は、私が遣ろうとしていることを解っているのだ。それに…そういう友人や知人がいることにも気付いているのか
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