暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
響き合う『過去』と『現在』
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いう酒は日本酒や焼酎以上にクセが無く、アルコール度数が高いのが特徴だ。そのせいもあってか、ロックやストレートだけでなく、カクテルレシピも多い。

「しかし、最近は船舶護衛の任務が多いね、何かあるのかい?」

 確かに最近、一般企業や陸軍からの要請による船舶護衛依頼が増えていた。それだけ鎮守府は儲かるし、有り難い事なのだが、如何せん急激に量が増えた事が気にかかっていたらしい。

「……まぁ、隠しても仕方ねぇか。近々大規模な作戦展開が予定されててな。」

「ほぅ、大本営からの立案かい?」

「いや、陸軍だ。戦線拡大やら同盟国との連絡の効率化を目的として島嶼を攻略、そこに陸軍の航空基地を建設したいらしいな。」

 そんな話をしながらカナッペの盛り合わせの皿を出してやる。

「へぇ、海軍嫌いの陸軍も流石に上陸作戦となると、海軍に頭を下げなくてはいけないわけだね。」

「そういう事だ。それで物流やら人の流れが激しくなっててな、船舶の往来が増加している。」

 響の姉妹達もそれぞれ、行き先の違う船舶の護衛任務に就いている。

「ところで司令官、お代わりを貰いたい。」

 おっと、話に夢中になっていたせいで、響のグラスが空になっているのに気付かなかった。

「すまんな、気が付かんで。急いで作るよ。」






 じゃあお次は、少し珍しい一杯を。用意するのは氷の入ったタンブラー。そこにウォッカとクレーム・ド・バナーヌというバナナ風味のリキュールを30mlずつ注ぐ。後はジンジャーエールを並々と注いでやり、軽くステア。スライスオレンジを飾ったら出来上がりだ。

「ハイよ、『アンパイネン』だ。」

 俺の分も支度して、会話を交わしながら飲んでいく。

「これは面白い組み合わせだね。」

「そうだな、酒を炭酸飲料で割ってるからハイボールスタイルのカクテルだが、中々無い組み合せだろうよ。」

 味の雰囲気としてはバナナの味とジンジャーエールの生姜味が混じり合ってトロピカル・ドリンクを彷彿とさせる。一杯当たりのアルコール度数は20度前後と決して低くはないのだが、ジンジャーエールの強い味がそれを上手く打ち消し、飲みやすくしている。店によってはオレンジを飾らない店もあるのだが、飲み慣れない内はオレンジの爽快感が有り難く感じる。目先を変えたいときには面白い一杯と言えるだろう。

「暁姉さんが好きそうな味だ……。」

 ぼそり、と呟く響。どうやら、俺の悪い予感は当たったらしい。響はトラウマが蘇りつつある。

 帝国海軍、特V型駆逐艦の2番艦・響は、4姉妹の内自分だけが生き残って戦後、ソ連に賠償艦として引き渡された。その後はソ連海軍の一翼を担っていたが、その最期は標的艦となって今もなおウラジオストク沖
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