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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十七話 亡霊
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宇宙暦 797年 10月 6日    ハイネセン 統合作戦本部 ジョアン・レベロ


「ボロディン君、君は今地球と言ったのかね」
「そうです、議長」
トリューニヒトが困惑した表情で私を見た。気持は分かる、私も困惑を禁じえない。地球が人類発祥の星だとは知っている。しかし現在では衰退著しい過去の星のはずだ。それがフェザーンの裏の支配者? 冗談にしか思えない。

しかし話を持ってきたのがヴァレンシュタイン元帥だ、そしてヤン提督はその話に一理有ると考えたから軍の上層部に話を繋いだのだろう。確かにフェザーンを創設したレオポルド・ラープは地球出身だった、それが根拠なのか?

ボロディン、ビュコック、グリーンヒル、いずれも凡庸ではない。彼らが我々政治家に話すと言う事はそれなりに信憑性が有るということだろう、ラープが地球出身者だという事だけではない、我々の知らない何かが地球に有るということになる……。

「ボロディン本部長、君は地球がフェザーンの裏の支配者だという考えをどう思うのかね、君自身は信じているのかな?」
ホアンの問いかけにボロディンは一瞬躊躇いを見せた。

「正直に言いますと半信半疑なところは有ります。しかし現時点では一番可能性が高いと考えています」
ボロディンの言葉にビュコックとグリーンヒルが頷くのが見えた。それなりに根拠が有るということだろう。

「本部長、帝国の謀略と言う事は無いかね」
「謀略といっても何を狙っての謀略です?」
「それは分らんが、ヴァレンシュタイン元帥は帝国きっての謀略家だ。何か狙いが有るのかもしれん」
ネグロポンティが謀略ではないかと心配している。確かにその可能性は否定できないが先ずは話を聞くべきだろう。

「謀略かどうかは話を聞いてから判断しても遅くは無いだろう。そうじゃないかな、トリューニヒト」
「レベロの言う通りだな。ボロディン君、ヴァレンシュタイン元帥の推論を私達に教えてくれないか」
「私よりもグリーンヒル総参謀長の方が適任です。総参謀長、頼む」

グリーンヒル総参謀長はボロディンの言葉に軽く頷くと話し始めた。
「ヴァレンシュタイン元帥は地球は以前より復権を望んでいたのではないかと考えています。しかし銀河連邦、銀河帝国ともに地球に対して関心は持たなかった。地球は忘れられた星でしかなかったのです。当然ですが彼らはその事を恨んだでしょう」

恨みか……。分らないでもないが、それとフェザーンがどう絡む。
「そんな地球にとって一つの転機が訪れます。宇宙暦六百四十年に起きたダゴン星域の会戦です。それまで人類社会は帝国の下に一つだと思われていました。しかし自由惑星同盟が存在する事が分かり、人類社会は二つに分かれている事が分かったのです。地球は同盟を利用して地球の復権を図ろうとした」

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