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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十七話 亡霊
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ているのなら断われば良い。問題は正しかった場合だな、その場合どうするか……。帝国に協力するか、断わるか……。そのあたりも考える必要が有るだろう。一週間後、もう一度集まろう、それまでに各自考えをまとめておいてくれ」
皆が頷き、会議は終了となった。

帰ろうとすると、トリューニヒトが私を呼び止めた。
「レベロ、少し話したい事がある、残ってくれ」
「ああ」

誰も居なくなった応接室でトリューニヒトが渋い表情をしている。
「レベロ、君は憂国騎士団を知っているな」
「知っている」

憂国騎士団、過激な国家主義者の集団だ。主戦派の塊と言って良い。当然だが主戦論を吐いていたトリューニヒトとは親しい関係に有った。
「連中とは未だ付き合いが有るのか?」
「いや、今は無い。彼らにとって私は腰抜けで裏切り者さ」
トリューニヒトが自嘲交じりに言葉を出した。

「それで連中がどうかしたか?」
「連中の中に地球教徒がいた」
「!」
「一人や二人じゃない。かなりの数だ」

「どういうことだ、それは。地球教徒が主戦論を煽っているということか」
思わず小声になった。
「地球は我が故郷、地球を我が手に、それが連中のスローガンだった。分かるだろう? 地球は帝国内に有る。主戦論者とは話が合うのさ」
地球は同盟と帝国の共倒れを狙っている。ヴァレンシュタイン元帥の推論が耳に蘇った。

「……トリューニヒト、連中とは今は付き合いはないんだな」
「無い。信じてくれ」
「分かった、信じる。連中とは二度と会うな、危険だ」
私の言葉にトリューニヒトは頷いた。

「危ないところだった。もう少し政権を取るのが遅かったら連中に取り込まれていたかもしれん……」
トリューニヒトが呟く。声には怯えのような響きがあった。取り込まれる、ありえない話ではないだろう。トリューニヒトがいずれは政権を取ると見た人間は多かったはずだ。地球から見て主戦論を唱えるトリューニヒトは操り易い存在に思えただろう。

どうやら地球教を単なる宗教と見るのは誤りのようだ。例の推論はかなり確度が高いと見て良い。トリューニヒトの話を聞くまでは何処かで胡散臭く感じていたが、認識を改めるべきだろう……。



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