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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十七話 亡霊
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。偶然で片付ける事は出来ないでしょう」
「!」

また沈黙が落ちた。地球教=地球と考えれば地球はヴァレンシュタイン元帥を邪魔だと思っている事になる。何故邪魔だと思っているのか? 帝国を混乱させたいと思ったからだろう。つまり帝国の力を弱め帝国と同盟の共倒れを狙っている……。ヴァレンシュタイン元帥の推論は正しいと言う事になる。

「帝国では地球、地球教を弾圧しているのかな、帝国の重臣を暗殺しようとしたのだ、何らかの動きがあっても可笑しくは無いが?」
「有りません。帝国は弾圧を下策だと考えています」

下策? どういうことだ? 帝国なら地球教の弾圧など訳も無いことだろう。
「自由惑星同盟は信教の自由を認めています。帝国が地球教を弾圧すれば、それをきっかけに反帝国感情が高まるだろうとヴァレンシュタイン元帥は見ているのです」

「……信教の自由か」
呟くようなホアンの声だった。思いがけない視点だったのだろう。確かにそれが原因で反帝国感情が高まれば捕虜交換も危うくなる。しかも帝国側に非が有るという事になるだろう。

「亡命者からの情報で帝国は同盟との共存を考えていない事が判明しています。同盟が帝国を受け入れ易いように国内を改革している。信教の自由がきっかけで反帝国感情が高まるのは避けたいのでしょう」
「……」
こちらの事を良く知っている。手強い相手だ、思わず溜息が出た。

「帝国は同盟が地球教に対してどう対処するかを知りたがっています。捕虜交換の調印式にはヴァレンシュタイン元帥が自ら臨むそうです。その時に答えを聞かせて欲しいと」

ボロディン本部長の言葉に応接室で視線が飛び交った。
「つまりそれは同盟と帝国が協力して地球教に対処したい、そういうことかな?」
「そういうことだと思います、議長」

その言葉にまた応接室で視線が飛び交った。
「厄介な事だな、帝国は地球教の弾圧を同盟と一緒にやりたいと言うことなのだろうが……」
「信教の自由か……」

トリューニヒトとホアンが歯切れ悪く顔を見合わせている。二人が何を心配しているか分かる。一つ間違うとトリューニヒト政権は帝国と組んで地球教を弾圧していると非難を受けるだろう。非難だけならともかく主戦派を勢いづかせかねない。

「とりあえずは地球教のことを調べる必要があるな。何処までヴァレンシュタイン元帥の推論が正しいのか」
「そちらは軍のほうで行ないましょう」
トリューニヒトの要求にボロディンが答えた。

「それと同盟政府がかつてフェザーンの成立に関与したのかどうか、こいつはレベロ、君が調べてくれ」
「分かった。しかし古い話だからな、何処まで分かるか……。あまり期待はしないでくれよ」
私の言葉にトリューニヒトは頷いた。

「ヴァレンシュタイン元帥の推論が誤っ
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