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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十六話 安らぎ
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いない、ただ伝えたかっただけだ。面会は五分と経たずに終わった。

ラインハルトには会わなかった。会っても話す事が無いのだ、会う必要は無いと思った。だが彼が死んでから会うべきだったと思うようになった。俺には話す事は無くても向こうには有ったかもしれない。

怒声かもしれない、恨み言かもしれない、それでも俺はラインハルトに会って話を聞くべきだったのだろう。それが出来なかったのは多分会うのが怖かったからだ、だから無意識に避けた……。情けない話だ、一生後悔するに違いない。

義父には俺からラインハルトの死を伝えた。義父はしばらく無言だったが“あまり気にかけるな、やむを得ぬ事だ”と言った。どうやら俺の事を気遣ってくれたらしい、有り難い事だ。義父が居なければ、俺は落ち込む一方だっただろう。そんな暇は無いというのに……。

そろそろ艦隊司令官達も帰って来る。フェルナーも後十日もすればイゼルローン要塞に着くだろう。忙しくなるだろうな、帝国も同盟も忙しくなる。同盟がどう反応するか。特にトリューニヒト、あの男がどう考えるか……。

捕虜交換も具体的に詰めなければならない。此処まではフェザーン経由でやっていたが、ここからは軍が行なうべきだろう。エーレンベルク元帥に頼むべきだな。軍務省でタスクチームを作ってもらい、場合によってはイゼルローンに行って向こうと調整してもらうことになるだろう。


宇宙暦 797年 10月 5日    イゼルローン回廊  戦艦ユリシーズ  ニルソン中佐


此処最近イゼルローン回廊は平穏だ。一時期、帝国の内乱が終結した直後は亡命者というお客さんがぞろぞろやってきたが今はそういうことも無い。今帝国と同盟のホットスポットはフェザーンだ。イゼルローン回廊は以前ほど宇宙の注目を集めてはいない。

注目を集めてはいないが油断していいということではない。戦艦ユリシーズは現在イゼルローン回廊を単艦で哨戒中だ。上からは“敵を発見してもみだりに戦端を開くな。後退してそのむねを要塞に報告しろ”と命令されているが、一隻では先ず戦闘は出来ないだろう。嫌でも命令に従う事になる。

捕虜交換を前に紛争は起せない、上層部はそう考えているようだ。これは軍というより政府の方針なのだろう。今のままでは同盟の戦力は著しく見劣りがする、捕虜交換を行い軍を再編し持久体制を整える。今は体力を回復する時期というわけだ。こちらから帝国に攻め込めない以上正しい選択だろう。

先日起きたフェザーンでの紛争はイゼルローンでも大騒ぎになった。明らかに同盟に非があり、帝国はそれを理由に攻めてくるのではないかとイゼルローン要塞では緊張が走った。当然だが捕虜交換など吹き飛ぶだろうと……。

最終的に戦争は回避され、捕虜交換が行われる事が確認された。どうやら捕虜交換を優先
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