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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十六話 安らぎ
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ら国家の重臣としては何の不安も不満も無い。でも、分かっているのだろうか? 皆は夫と共に未来を作りたいと思っているのだ。道を示した人と共に進み、その喜びを分かち合いたいと思っている。

この屋敷に住むようになってから夫は帰宅するのが早くなったそうだ。そうフィッツシモンズ大佐が言っていた。これまで一人夜遅くまで仕事をしていたのが無くなったと喜んでいた。少しは結婚が夫の生活を良い方向に変えたのだろうか? そうであれば嬉しい。

この屋敷も雰囲気が明るくなった。養父は軍を退役して以来少し寂しそうだった。尋ねてくる人が有ってもその人が帰ってしまうと何処となく寂しそうだった。でも最近では養父と夫は良く二人で話をしている。二人とも楽しそうだ。私と夫の結婚を一番喜んでいるのは養父かもしれない。何時までもこんな穏やかな日々が続けば良いと思う。

二人の間では暗黙の決め事があるらしい。書斎で話すときは仕事の話、それ以外の話は書斎では話さない。二人が書斎に行くときは私は飲み物を二人に出して話が終わるのを待っている。

先日、養父と夫は書斎で話をしていた。飲み物を出そうとした時、たまたま二人の声が聞こえた。“イゼルローン”、そう聞こえた。紛争が起きたのはフェザーンだった。それなのにイゼルローン……。戦争になるのだろうか、今此処にある穏やかな日々が無くなってしまうのだろうか……。何時かはそんな時が来るとは思っていたけどこんなにも早く来てしまうのだろうか……。

その日の夜、思い切って夫に尋ねた。“戦争が起きるのですか”と。夫は驚いたように私を見た。訊いてはいけない事だったのか、私は慌てて書斎での会話を聞いてしまった事を話した。

怒られるかと思ったけれど夫は笑っていた。そして“当分戦争は無い、心配する事は無い”、そう言ってくれた。優しい笑顔と声だった。思わず見とれてしまった。何時までもその笑顔を見せて欲しい。私だけにとは言わないから何時までもその笑顔と声を忘れないでいて欲しい……。



帝国暦 488年  9月 25日  オーディン  宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


一昨日、ラインハルトが死んだ。ラインハルトだけじゃない、アンネローゼ、キルヒアイス、オーベルシュタイン、内乱に乗じ簒奪を企んだとして皆死を賜った。ラインハルトとアンネローゼは自裁を許され毒酒を呷った。だがキルヒアイスとオーベルシュタインは銃殺だった。

刑が執行される前日、オーベルシュタインと会った。彼に劣悪遺伝子排除法が廃法になる事を伝えた。多分既に知っていただろう、だがどうしても皇帝がそう決めたのだと俺の口から伝えたかった。

オーベルシュタインはそれを聞いても何の反応も示さなかった。無愛想な奴だと思ったが不満には思わなかった。元々返事など期待しては
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