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提督はBarにいる。
我が鎮守府のバレンタイン事情〜春雨の場合〜
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 一年の内、最も胸焼けがする季節がやって来た。鎮守府の中が甘ったるい匂いに包まれ、艦娘達は料理雑誌やら何やらを見ながら騒いでいる。

「なぁ……毎年の事だけどさぁ。疲れない?仕事の合間にチョコ作りとか。」

 午後の執務も一段落した午後3時過ぎ、その日の秘書艦だった霧島に尋ねてみた。

「どうでしょうかね?私は今回彼に初めて作ろうと思っていますので、寧ろウキウキしてますが。」

 ウチは250を超える艦娘がいる。その全員からチョコを貰っていたら俺が糖尿病直行な為、一定のルールを設けている。

1.他に本命がいる人は原則提督には渡さない

2.巨大過ぎるチョコは×

3.変な物を混入しない

 この3つのルールが出来ただけで、大分チョコを貰う数は減った。…というか、さりげに惚気て来るようになったな霧島。どうやら交際は順調らしい。胃もたれ気味なのに余計にもたれそうだ。と、そんな会話をしていた所に扉がノックされる。

「はいは〜い、開いてるよ〜。」

「し、失礼しますっ!」

 緊張して少し上ずったような声色。……だが、声からすると恐らくは春雨だろうか。時期から考えてもチョコを持ってきたのかな?渡すだけなのに緊張するなんて可愛い奴め。

「は、春雨!?その格好……」

「うぅ……、い、言わないで下さいぃ…」

 その服装はいつもの黒を基調とした白露型の制服ではなく、長袖のエプロンドレス……ようするにメイド服。胸元には大事そうにギュッとハート型の包みを抱えていて、恥ずかしいからか顔が真っ赤で目も涙目。

「ど、どうしたんだその服。」

「さ、漣ちゃんが『ご主人様はコスプレ好きだからこのカッコで行けばバッチリですよ!』って……」

 さ、漣ぃ……!お前は何という…素晴らしいチョイスをするんだこの野郎?悔しいが認めざるを得ねぇよ!似合いすぎだよ!めちゃめちゃ可愛いよ!最近流行りのミニスカメイドじゃなくてクラシカルなロングスカートのメイド服ってのもポイント高けぇよ。もうね、ヤバいね。学生時代男社会に生きてきたから、こういうイベントに縁が無かったが、生きててよかったと素直に思うわ。

「ま、まぁ座れよ。丁度オヤツの時間だしな。…霧島、コーヒーを頼む。」

「ハイ、ただいまお持ちします。」

 霧島が執務室を出て行く。流石にチョコを渡す時に他の女性がいるのは気になるだろうという俺なりの配慮だ。霧島が妙にニヤニヤしていたのは気にしないでおこう。



「そ、それで…そのぅ……バ、バレンタインが近いので、チョ、チョコをお持ちしましたっ!」

 この初々しい反応。何だか学生時代に後輩の娘から告白されているような気恥ずかしさだ。ダークブラウンの箱にピンクのリボンでデコレーションされた箱は、春雨
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