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超速閃空コスモソード
番外編 残された姫君達
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るってよ」
「マジ? 俺達みたいな外国人からってならまだしも、地元の縁談まで切ってんのかよ。血統主義を重んじてるなら、武家からの誘いは本望なんじゃないのか?」
「それなんだが……噂によると、三年前に好きだった男を戦争で亡くしたんだそうな。以来、縁談は軒並み断り続けてるんだってよ」
「へぇ……よく実家が納得したなぁ」
「今や中尉殿はジャパン・エンパイア最強のパイロット。その武名はコズミシア中に知れ渡ってんだ、国も無闇に口出し出来ねぇんだろ」

 男達が語るように、マイは戦後から三年を経た今も、故郷に帰ることなくヘレンズシティ航空基地でパイロットを続けている。無論その間、名声と美貌を聞き付けた有力者達からの縁談は絶えなかった。
 ヘレンズシティの実業家。名門武家の長男。コズミシア星間連合政府の高官。果ては、征夷大将軍の側室の誘いまで。彼らはジャパン・エンパイアが輩出した名パイロットである彼女を、どうにか手に入れようと策を弄していた。

 ――だが。ジャパン・エンパイア軍は無論のこと、コズミシア星間連合軍の中においても絶大な名声と発言力を持つ彼女を、意のままにする事は困難を極め。実家である辻霧家ですら、彼女を完全にコントロールするには至らず。
 今年に入って十七歳になり、より強さと美しさに磨きを掛けた今でも、彼女は独り身で在り続けていた。

 武の道に生まれ落ちた、絶対不可侵の戦乙女。それが、世に知られる辻霧マイの姿なのである。

「……よう。相変わらず、道を歩くだけで世の男を振り回してやがるな」
石動(いするぎ)教官……」
「石動少佐だ、辻霧。確かに教官職には違いないが……もうお前は、俺の生徒じゃない」
「ですが……今でも少佐は、私の教官です」

 その時。右目を漆黒の眼帯で覆い隠した屈強な軍人が現れ、彼女の隣を歩き始めた。
 切り揃えられた黒髪は荒々しく逆立っており、獰猛な肉食獣を彷彿とさせる強面であるが――そのような外見とは裏腹に、語り口は穏やかなものである。

 そんな彼……石動ケンタ少佐を前に、寡黙な彼女は珍しく私情で口を開いていた。今やジャパン・エンパイア最強のパイロットとなった教え子の横顔を、彼は暫し神妙に見つめる。

「聞いたぜ。征夷大将軍の側室の話、蹴ったんだってな。武家の者としてあり得ない、お前の教え子はどうなってるんだって、里のうるせぇオヤジ共に散々どやされたぞ」
「申し訳ありません。腕においても心においても未だ未熟であるがゆえ、今は軍人として精進せねばならないと判断して……」
「……お前のやることにいちいちケチを付けるつもりはない。お前のおかげで、我が日埜本帝国(ひのもとていこく)もコズミシア星間連合政府から一目置かれる立場になれたんだ。お前には、目に見えるカタチだけの階級だけじゃ抑
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