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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六話 キフォイザー星域の会戦(その4)
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軍が強いのはそれを理解している人間達が指揮をしているからだ。だが貴族連合軍は違う。理解していない、理解する機会を得ぬままに生きてきた貴族達が指揮を執っている。それこそがヴァルハラで、キフォイザーで敗れた真の原因だ、そう言いたいのだろう。

「ブラウンシュバイク公、後ほど皆に会戦の結果を周知すべきかと思います」
クライスト、ヴァルテンベルク大将からの報告は私室で受け取った。皆は戦が起きた事は知っているだろうが敗戦の事実はまだ知るまい。隠すべきではないし、いい加減な噂が流れるのも拙い。正直に伝えるべきだろう。

「広間に皆を集めるか」
「はい、その際、今我等が話した事を皆に伝えるのです。協力すれば勝てるのだという事、身勝手な行動をとれば自分だけではなく味方まで敗北する事になると」

なるほど。この男はその事を考えていたのか。今回の敗北を最大限利用しようとしている。この男にしてみれば感情的になったわしなど頼りない限りだっただろう。情けない事だ。

「いい考えだ、やるべきだろうな。だがリッテンハイム侯派の人間達が素直に受け取ってくれるかどうか……」
「確かにそれは有ります。しかし一旦反逆を起した以上、降伏しても許される事は有りません。もう後には退けない、それを肝に銘じさせることです」

グライフスの言う通りだ。反乱を起したのだ、覚悟を決めさせるべきだろう。生き残るために戦えと……。
「身辺に御注意ください」
「?」

囁くような声だった。妙な事を言う、そう思いながらグライフスの顔を見た。グライフスは厳しい表情で一歩わしに近付いた。
「愚か者が公の首を手土産に降伏しようとするかもしれません。これはリッテンハイム侯派の人間だけではありません。全ての貴族に言える事です」

グライフスの言葉を否定できなかった。黙ったままのわしを見ながらグライフスは頷くとさらに言葉を続けた。囁くような声は変わらない。
「公だけでは有りませんぞ。エリザベート様、サビーネ様の身辺にも信頼できる人間をつけてください。殺すと言う事は有りますまいが何らかの形で利用しようとは考えるかもしれません」

「分かった、そうしよう。わしも寝首をかかれるなどという無様な最後は願い下げだ」
思わず声が掠れた。口の中が粘つくような不快感がある。恐怖によるものではない、身勝手な貴族に対する不快感だろう。

「グライフス、広間に皆を集めてくれるか、一時間後で良い」
「一時間後ですか?」
「ああ、皆に話す前にサビーネに伝えねばなるまい。わしの役目だろう」
グライフスは頷くと“分かりました”と言って、部屋を出て行った。


グライフスとの話が終わった後、サビーネの部屋に向かった。予期したことでは有ったが部屋にはサビーネだけではなくエリザベートも居た。二人とも不安
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