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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百話 辺境星域回復
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不可能となります」
グライフスの表情は暗い、彼は暴発は必至だと見ている。

アンスバッハからも厳しい状況だと言う報告は受けている。寄せ集めの軍の脆さが此処に来て出た。これまでは押さえてきたが、もう押さえきれなくなっている。

沈黙が我々を包んだ。元々勝ち目は多くは無い、それがますます小さく、いや皆無になろうとしている。どうすればこの状態を打開できるのか……。

「ブラウンシュバイク公、私が行こう」
「何を言っているのだ? リッテンハイム侯」
「だから、私が彼らを率いて辺境に行くと言っている」

馬鹿な、何を言っているのだ、この男は……、彼らの我儘を認めると言うのか? これまでの努力はどうなる、全てを無に帰すと言うのか。唖然としているとリッテンハイム侯が微かに笑みを浮かべた。

「まあ聞いてくれ。このままでは彼らは無秩序に出撃するだろう。そうなれば各個に撃破される」
「……だからと言って」

「私が率いても勝てるとは限らない、そうだろう?」
「……言葉は悪いが、そうだ」
「だが味方を逃がす事は出来る」
「……」

味方を逃がす? 何を言っているのだ? 思わず目の前のリッテンハイム侯の顔をまじまじと見た。相変わらず笑みを浮かべたままだ。グライフスは顔を強張らせている。どういうことだ?

「今、一番拙いのは彼らを無秩序に出撃させる事だ。私が指揮官として彼らを率いて辺境星域に向かう」
「……」
「当然敵との会戦になるだろう。おそらくは負ける……、問題は負けた後だ」

リッテンハイム侯はもう笑みを浮かべてはいない、真剣な表情だ。
「秩序を持って後退できるか、潰走するかで損害は全然違う。私が指揮官として皆をガイエスブルクに撤退させる」
「リッテンハイム侯、まさか卿は……」
死ぬ気か、思わず声が掠れた。

「いえ、その役は小官がやりましょう。彼らを抑えられないとなればリッテンハイム侯の言うとおり、いかに上手く負けるかが問題になります。難しい任務です、此処は軍事の専門家である小官に任せて下さい」

グライフスが自分が行くと言い出した。おそらくリッテンハイム侯では戦死しかねない、そう思ったのだろう。同感だ、あのまとまりの無い連中を率いて撤退戦? 無理だ、到底生きては帰れない、グライフスだとて生還は難しいだろう。それも認められない。

「馬鹿な、卿らは死ぬ気か? どちらが死んでも我々の士気はガタ落ちだ。何を考えている」
「大丈夫だ、そうはならない」
リッテンハイム侯が自信ありげに答えた。

「今、リッテンハイム星系に敵の本隊が押し寄せている。この状態で私が自分の領地の防衛よりも辺境星域の奪回を目指せば、当然彼らは私を信頼するだろう。そして負けたとき彼らを逃がすために私が戦えば、今度こそ彼らは心を一つ
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