暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
邂逅
大元帥の奪還
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
官は不覚にも硬直。
 不意を突かれ思考停止状態に陥り、慌しく風雲児の思念を走査《スキャン》。
 潜在意識を覗き記憶を辿る白魔道の秘法、精神測定《サイコメトリ》の術を駆使。

 法螺話を好む元海賊の得意とする口から出た出鱈目、嘘か真か不明の噂話を誇張した類か精査。
 ヴァレリウスの思念波が普段は滅多に見せぬ驚愕、興奮の感情に彩られ魂の主に殺到。
 アルド・ナリスの面に奇妙な表情が浮かび、ゆっくりと振り返った。
 取り繕った動作を裏切り、瞳の輝きが内心の興奮を伝える。
 魔戦士は動物的な独特の勘を働かせ、ナリスの興味を掻き立てたと察知。
 災厄の運び手は得意満面でニヤリと笑い、主導権を譲った運命共同体の瞳を覗き込む。

「今回は嘘偽り無く心の底から言うが本当に、そなたには驚かされるね。
 スカールと戦った後、暫く姿を隠していた様だが。
 運命の再会を果たした場所、マルガに情報収集の網を張って置いたのかな?
 それとも新生ゴーラ軍の指揮を副官に委ね、単身リリア湖まで偵察に来ていたのだろうか?

 ヴァラキア出身で元海の兄弟となれば当然、遠泳の術には練達しているだろうけれど。
 魔道師達が協力して厳重に結界を張っていた筈だが、一体どうやって島に潜入し得たのか?
 どんな推理をすれば謎が解けるのか、皆目見当が付かないね。
 私の頭脳を以てしても御手上げと言わざるを得ない、降参だよ、イシュトヴァーン」


 無邪気な子供の様に粗野ではあるが端正な顔が綻び、得意気な表情が浮上。
 陽気な紅の傭兵、ヴァラキアのイシュトヴァーンを偲ばせる面影が過った。
「リリア湖じゃねぇ、レントの海で見たんだ。
 名前も無ぇ、無人島の近くでさ。
 俺とグイン、リンダとレムスの4人で海賊船に乗り組んでたんだが。
 そう云やぁ、セムの猿娘も一緒だったっけかな。

 黒竜戦役の最中、パロがモンゴールに占領されてた頃の話さ。
 嵐の夜、グインが海ん中に落ちちまったんだ。
 俺も危機一髪だったんだが強運の賜物、落雷に救けられて窮地を脱したんだが。
 そん時に海の中から出て来やがったんだよ、光の船ってのがさ」

 ナリスも普段は滅多に見せぬ興味深々の表情を見せ、夢中で聞き入る。
 ヴァレリウスも不本意ながら惹き付けられ、耳を澄ませ拝聴する事となった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ