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豹頭王異伝
邂逅
新たな疑問
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「向かい風だってのに、平気で近寄って来やがった。
 櫓も帆柱も無ぇってのに凄ぇ速さで、荒波を突っ切ってたんだぜ!
 豹の大将も後で言ってたけどな、他にも妙な事があんだよ。
 奴が甲板に落ちた時、光に包まれた人影が出て来て船の中へ引っ張り込んだらしい。
 そいつは見ちゃいねぇが無人島へ上陸した後、洞窟ん中で奇天烈な物に出くわしたぜ。
 でっかい光の塊みてぇなもんだったがよ、他にも在り得ねぇ様な化け物が出て来たっけ。

 俺達が海へ逃げ出した直後、でっかい光の玉が島を焼き払って空に消えて行っちまった。
 誰も信じちゃくれまいから言った事は無ぇが、あんなもんは後にも先にも見た事が無ぇ。
 死の都ゾルーディアに棲む不死身の怪物、氷雪の国を護る妖獣もやっつけたけどよ。
 嘘だと思うなら伝説の豹頭王グイン様に聞けよ、いつもの法螺話なんかじゃねぇからな!」

(どうやら突拍子も無い法螺話では無い様だ、大変興味深い内容だが君の意見を聞きたい。
 イシュトヴァーンの話を真実と仮定すれば、レントの海に古代機械が在った事になる。
 空の彼方へ消え失せた様だが魔道師の塔は未調査か、或いは情報を隠匿したのか?
 情勢が落ち着いた暁には、時系列を整理し一見無関係な報告も精査の必要があるね)
(当時の私は下っ端でしたが、感知していれば噂の形で流失は不可避と思われます。
 カロン大導師へ関連の疑われる情報の提供、可及的速やかな返答を要請します)

(魔道師の塔には情報を加工せず憶測、推定の類は一切入れるなと強調する様に。
 判断を邪魔する脚色は不要だ、古代機械の事を私以上に知る者は皆無だからね。
 あの機械は瞬間移動の原理を秘め隠し、私の質問を無視する生意気な奴だ。
 イシュトの話を基に誘導尋問を仕掛け、同類に関する情報を白状させてやる。
 人間と機械の知恵比べ、論理(ロジック)の決闘には快く協力して貰いたい。
 パロ最高の策謀家には詭弁の術も大いに期待する、その心算で居てくれ給え)
 貴方には逆立ちしたって敵いませんよ、と呟き掛けたが。
 ヴァレリウスは慌てて、心話の《声》を抑え込む。

「そなたの見た物は私が密かに温めていた推論、荒唐無稽な夢想を裏付けてくれそうだ。
 論理に悖る多種多様な事象を解明する重要な鍵、実に論理的な物的証拠と推察される。
 グインに聞くまでも無く非常に面白いね、今夜ゆっくりと話を聞かせてくれないか。
 もう陽が暮れる刻限も遠くない、次の行軍を終え夜営の準備に入る頃までには戻るよ。
 酒でも飲み交わしながら一晩ゆっくり語り明かそう、親愛なるイシュトヴァーン。
 そなたはやはり私の夢に翼を与え、運命の扉を開いてくれる大切な人なのだね」
 ナリスの賛辞を受け、闇夜に煌く星の如き黒い瞳が煌いた。


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