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一四七キロフォーク
第五章
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「相手に一点でも入ったら」
「それでか」
「今日は終わり」
「もう大谷さんは打てない」
「そうだっていうのね」
「一四七キロのフォークなんか誰が打てるのよ」
 それこそというのだ。
「もう無理よ」
「ああ、大谷さんマウンドにいる限り」
「ヒットが一本でも出たらいい?」
「今日はそんなレベルよね」
「人間の打てるレベルじゃないわね」
「私もそう思うわ」
 六人共流石にソフトバンクの勝利はないと思った、大谷の想像を絶するまでのボールの前にだ。そして咲の言った通りに。
 ソフトバンクはレアードのホームランで一点奪われた、大谷はその一点を守りきり。
 八回まで抑えた、九回になりソフトバンクは何とか攻めようとしたが及ばずだった。試合は日本ハムのものとなった。
 日本ハムの勝利を見てだ、咲は言った。
「今年終わったわ」
「かもな、これは」
「日本ハムに流れがいったわね」
「今日の一勝大きいわよ」
「それも相当に」
「どう見ても」
「ええ、日本ハムこの勢いで明日も攻めてくるから」
 咲には流れが見えていた、それは彼女にとって悪いものであった。
「明日も負けるわね」
「明日負けたらマジックか」
「日本ハムにね」
「じゃあこのまま?」
「日本ハム優勝?」
「そうなるっていうのね」
「なるわね」
 咲はまた言った、見れば彼女のコップの酒は減っていない。他の面々は今は飲んでいるが彼女だけはだった。
「今年は終わったわ」
「諦めるの早くね?って言いたいけれどな」
 春華は自分の言葉を言いながら引っ込めた。
「あんなの打てないからな」
「打てたら凄いわよ」 
 静華もこう言う。
「阪神で打てるバッター一人もいないわよ」
「というかどのチームにもいないでしょ」
 凛は大谷のそのフォークを思い出していた。
「一四七キロのフォークなんてはじめて見たわよ」
「そんなの見たらね」 
 七々瀬は信じられないものを見たという顔だ。
「完全にね、流れは」
「今年の日本ハムを象徴というか」
 未晴は何とか冷静さを保ちながら述べた。
「そうした試合だったわね」
「もう終わったわ、あのボールはどうしようもないわ」
 咲は完全にお手上げといった顔になっていた。
「今シーズン、ソフトバンクの優勝はないわ」
「だろうな、流石に」
「大谷さん打てないから」
「それじゃあね」
「勝てるものじゃないわ」
「絶対に」
「そう、終わったわ」
 咲は画面を前にして首を横に振った。
「また来年よ」
「じゃあ来年はな」
「ソフトバンク優勝ね」
「また一からやりなおし」
「そうしていくのね」
「三連覇はならなかったけれど」
「来年よ、本当に」
 こう言ってだ、そのうえでだった。咲はここでやっと酒を飲
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