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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第152話 冬の花火
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 白々とした……。蒼白いと表現される月が今と言う季節に相応しい光を降らせる夜。
 頭上に広がるは深い、深い夜の色に覆われる無辺の大宇宙。どんなに手を伸ばそうとも届かぬ大いなる氷空。
 その茫漠たる虚無に、重力と言う枷から解き放たれぬ自らを(かえり)みて、僅かながらの自嘲の笑みを口元に浮かべた俺。

 そう考えた瞬間――
 視界に鮮やかな色彩が広がる。

 明るすぎる夜空。その少し向こう側に撃ち上げられては、儚く消えて行く冬の華。遠すぎるが故に……。いや、おそらくこの二人だけの空間が外界から完全に隔てられているが故に、一切の音が聞こえる事もなく、ただ無音の内にゆっくり、ゆっくりと氷空へと駆け登り、そして消えて行く光輝。
 正直、冬の花火。それも、クリスマス・イブの夜に撃ち上げられる花火と言う事で、大きなテーマパークで繰り広げられる乱痴気騒ぎ系の花火を想像していたのですが……。

 遠いパノラマに一瞬の生を煌めかせ、最後は小さな雫となって消えて行く。澄み切った大気が鮮やかな色彩を余す事なく伝えて来る事に因って、その短い一生を強く感じさせている状態。……何と表現すれば良いのか少し悩む所なのですが、行く夏を惜しむ花火も当然のように趣があるが、冷たい冬の花火もまた同じように物悲しい雰囲気を強く伝えて来てくれている。こう言う感覚。
 おそらく、この刹那に輝き、一切の音を聞こえさせる事もなく儚く消えて行く様が、そして、消えた後に普段よりも何故か黒く感じさせる氷空だけが残る様子が、俺の心に何かを……小さな爪で引っ掛かれたような傷を残して居たのかも知れない。

 ようやく始まった今宵のメインイベント。その夜空に華やかな色を着けながら一瞬の後に消えて行く煌めきに意識を奪われる俺。この瞬間だけは、現在の異常な事態……。自らの式神扱いと成っている人工生命体の少女と共に入浴している、と言う状況を忘れられたのかも知れない。
 もっとも、花火などのタイプのイベントは()()で見るか、よりも、()と見るのか、の方が重要なイベントであるので……。

 互いに何も身に纏う事もなく肌を密着させる……などと言う異常なシチュエーションとは言え、彼女と共に冬の花火を見つめると言う行為は――
 そう考え掛ける俺。しかし、その時、共に夜空を飾る色彩を見つめている、と思っていた少女は……。

 それまで俺の左腕に完全に預けていた自らの上半身を、背筋を伸ばして椅子に座る形に。……つまり、太ももと左腕にほぼ均等に掛かっていた彼女の重みが、すべて太ももに掛かる形へと移行。
 そして、その事により同じ視線の高さとなった彼女が、俺の左の横顔を見つめた。……まるで、何かを言いたげな雰囲気で。

「どうした。何か起きたのか?」

 異常なシチュエーショ
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