暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第27話 母との別れ
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てくれと。

「タツマサ、そなた……!」
「勇者様……!?」

 そうして、竜正は再び――遥か遠い世界へと、舞い戻ったのである。

 世界と世界を繋ぐ扉である、光の渦が消える寸前。二度と現れるはずのない少年が、この世界へ姿を現した。

「なぜ……なぜ戻って来られたのです!? 母の元へ帰ることが、あなたの願いではなかったのですか!」
「……フィオナ。俺は、もう……帰れない。帰る場所が……もう、ないんだ」
「な、なんですって……!?」

 その現象に、フィオナは目を見開き、驚愕する。少年が望み続けていたはずの、故郷への帰還。それを投げ捨ててしまった彼の行動が、信じられなかったのだ。
 だが、竜正の荒んだ瞳を見つめる皇帝は、その理由に勘付いていた。長く故郷を離れ過ぎたせいで死んだことにされていたか。拠り所としていた居場所を、他人に奪われたか。
 そうして居場所を失ったから、彼はここへ戻らざるを得なかったのだと。――もはやこの子には、帰る家すらもないのだ、と。

「皇帝陛下。俺、王国に行きます。……まだ、戦いは終わっていないのでしょう?」
「……うむ。しかしだな、もはや貴殿が出向く程の規模の戦いは――」
「――これ以上、この世界から目を背けていたら。俺が奪ってきた命が全て、本当に無駄になってしまう。……そんな、気がするんです」
「タツマサ……」

 皇帝がそう悟る頃には――少年は瞳から希望の色を失ったまま、憑かれたように立ち上がる。
 ――そして、彼は再び旅立って行く。未だ憎しみと悲しみが渦巻く、王国の戦地へ。

 勇者の剣を、携えて。

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