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Element Magic Trinity
優しさに触れる
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嫌でも解る。
けれど、そうでなかった場合。彼女は、誰かに大切にされている事に気づかない。誰かが自分を慕い、好きでいてくれている事に気づかない。誰かに好かれるなんて事があるはずがないと信じて疑わないから、誰からも嫌われ続けた幼少期が根本にあるからこそ、ティアは誰かに愛されたとしても自覚が及ばない。
だからこそ、兄弟が優しい理由が解らなかった。相棒が母親ではなく自分を選んだ理由も、目の前の少女が友達になろうと手を差し伸べてくれた理由も。ただ一人いなくなるだけの事に、ギルドが一丸となって駆けつけてくれた理由すら、今になってようやく解る程に。

「その“好き”ですら、最近やっと解るようになったのに。それと恋との違いなんて解らない。私以外の誰かの事なら解っても、私自身の事は全く理解出来ないのよ」

嫌われるだけの時間を過ごして、そこで誰かを好きになんてなれる訳もなく。ようやく嫌われる以外の感情を向けてくる誰かに出会った頃には、既に人間不信が出来上がっていた。
だからティアにとって、誰かを好きになるというのはつい最近になって覚え始めた事なのだ。そして覚えたてのそれを完全に使うなんてまだ出来なくて、そんな時に投げかけられたのが、ルーシィからのあの問いだった。


『そ、そういうティアこそ。好きな人とか…あ、初恋とか?何かないの?』


ない、と言えばよかったのだろう。ティアだって、最初は「ある訳ないでしょ」と一言で片づけるつもりだったのだ。
けれど、その時にふと思い出した一幕があった。それを恋と呼ぶのかは解らなかったけれど、あの時感じた何かは、兄弟にも相棒にも友人にも向けた事のない何かで、気づけばあんな返答をしていて。

「……だけど」

いつの間にか少し暗い表情をしていたジュビアが顔を上げる。

「あの時の特別なんかじゃない事が、私には嬉しかった……それだけは言えるわ。本当に些細で、だけどあの家では…少なくとも、私にとっては当たり前じゃなかった事が、嬉しかったの」

群青の瞳が、懐かしむように伏せられる。
たった一人の友達に内緒話をするように、ティアはそっと話し始めた。







―――――確かあれは、私が四歳の頃。
一族の上、つまりはあの女から、星竜の巫女として完成する為って理由で魔導士ギルドへの所属を命じられた辺りだったかしら。
……ええ、私は巫女としては未完成だった。本来十二しか生まれないはずの十三番目、既に途絶えたはずの竜の血。明らかに異質な存在でありながら、その異質さで壊れる事はない。あまりにも特殊であまりにも異常、正当な巫女とは言えない存在。だからこそ未完成。

それでどうして魔導士ギルドに、って?
まず第一に、私には魔法のセンスがあった。自分で言うのもアレだけど、独学で元素魔法(エ
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