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恋姫†袁紹♂伝
第49話
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は思えん、展望があるのだろう?」

「……さすがだ、袁紹殿」

 ニヤリと犬歯を見せた華雄は、背後の部下に言伝を頼んで送り出す。
 少しして、彼女の部下は見知らぬ男を数人連れてきた。身格好からして軍属ではないようだ。

「紹介する、彼等はこの地で漁師を営む水夫達だ。
 あの大河で船を繰らせて、この者達の右に出る者は居ない」

「ほう、真か?」

「へ、へぇ……」

 突然連れて来られた軍儀の場。そして雲の上の存在から言葉を掛けられ、水夫達は完全に萎縮していた。

「彼の力を持ってすれば、あの河を渡れるはずだ」

「ま、待ってくだせぇ! 俺達は聞きたい事があると連れて来られただけでさあ!
 この天候の中、船頭をやらされるなんて聞いてねぇです!!」

 水夫達の代表者である男が、搾り出すように口にする。一般人は発言すら憚れる軍儀の場ではあるが、なぁなぁで決定される事を恐れたのだろう。彼らだって命は惜しいのだ。
 華雄が舌打ちしている所を見ると、その言は事実らしい。

「華雄が推した、お主達でも難しいのか?」

「む、難しいどころじゃ……。こんな急流の中で船を使うなんて、正気の沙汰じゃねぇ。
 ましてやあんな小船じゃ……」

「船ならある、ですな袁紹殿」

「……どこでそれを?」

「小さな軍師様が教えくれた」

 目を向けられた音々音は、反射的に目を逸らす。別に彼女を攻める気は無い。
 中型の存在を隠蔽していた訳でもなし、教えたのも味方である華雄だ。
 このような展開になるとは、露にも思わなかっただろう。音々音に非は無い。

 袁紹は音々音を呼び寄せ、桂花同様、膝の上に乗せて頭を撫でた。
 連合軍の遠征時に身に付けた、片膝一人乗せだ。両手に花で実にすんばらしい。

 それを見ていた水夫の数人が拳を震わせていたが、華麗にスルーする。

『おうおう兄ちゃんよ、軍議の場でイチャつくとはいい度胸だぜ』

「妬いているのか? 風」

「……今のは宝ャですよ」

「そうか、なら宝ャを愛でてやる」

「あっ……、むー!!」

「フハハハハハ! こそばゆいぞ」

 風に背中をポカポカと叩かれ、袁紹は楽しそうに笑い声を上げる。
 その羨まけしからん光景に、水夫が数人天幕外へ走って出て行く。世の中不公平にも程がある。
 
 彼らのやりとりで、天幕内は弛緩した空気が流れ出したが、次の華雄の一声で引き締まった。

「私が狙うは将兵では無く、あの目障りな投石機だ」

「! ……なるほど」

 華雄の目的に合点がいく。確かに、投石機さえ退けることが出来るなら、大炎を使って敵陣を切り崩し、数を持って圧殺すればそれで終わりだ。
 次戦は恐ろしく簡単に決着が付くだろ
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