暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第一章 開業
第14話 弟子ができた
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ……。

 大きなロータリー。林立するオフィスビル。斜め前に見える家電量販店。
 せわしなく行き交う人々。
 空気が汚れているせいか、少し霞んで白っぽく見える。

 これは……新宿駅西口?

 ぼくはロータリーを抜け、駅から遠ざかるように大通りを歩き出した。
 そしてしばらく歩いたのち、大きなビルの地下に降りていく。
 ここには確か携帯電話の……。

 あれ? 「種族ショップ」って何だ?

「ようこそいらっしゃいました」

 しわがれ声で挨拶された。
 店頭に出ていたその客引きの女性は、腰がずいぶんと曲がっている。
 よく見たら老婆ではないか。しかもどこかで見たような。

 あ、思い出した。いつぞやの転送屋のお婆さんだ。

「ここって携帯ショップじゃないの?」
「ここは種族ショップでございます」
「……」
「今なら、種族変更の事務手数料や解約手数料は一切いただきません」

 なぜかぼくは、不思議な力に引っ張られるように、スルスルと中へ入ってしまった。

「いらっしゃいませー」

 カウンターの中にいたのは、若い女性店員が一人だけだった。
 巨乳に赤みがかかった髪。そして赤黒い目。
 魔王だ。

 まだ引き返せる。
 けれども、ぼくは操られたようにカウンター前の椅子に座った。

「人間を解約して魔族として生きるということですね。承知いたしました」

 話が進んでいく。

「契約書にサインをお願いします」

 手が勝手に動いてサインをする。なぜだ。

「では契約成立ですね」

 店員……いや、魔王は両手の手のひらを上に向けた。
 左右の手に氷柱と火球があらわれる。

「マコト死ねええ!」
「うあああああっ」



 ……。
 あ、やっぱり夢か。

「嫌な夢を見るというのは……疲れているのかなあ。魔王の夢とかきっついわあ。なにが『いらっしゃいませー』だ。気持ち悪っ」

「誰が気持ち悪いって?」
「わあああああっ」

 ぼくに与えられていた、ルーカス邸の四畳半の和室。
 なぜかまた、ちゃぶ台のところに魔王が座っていた。
 ふたたび反射的に部屋の隅に飛んで、避難してしまう。

「だからああー! なああんでーいるのおおっ」
「わたしは魔王だぞ? 魔国内のどこに現れようが自由だろが」

 やはりこの四畳半の部屋では距離が十分に取れない。
 侘び寂びは要らないので、フローリングの八畳間がよかった。

「マコトおはよー」

 カルラもいる。またこのパターンか。

「なんで人が寝ている部屋に――」
「おい、朝起きたらまず挨拶だろ」
「……おはようございますお二方様」

 ぼくは起き上がると、ちゃぶ台の前で正座した。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ