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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第五十三話 長旅は退屈なのです。
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で、一般兵士をも交えてブリュンヒルト内で話をすることを好んだ。かつてハーメルン・ツヴァイ時代にザイデル伍長らと会話し、初めて他人の境遇に深く触れることができた機会をラインハルトは大将に昇進してなお忘れてはいなかったのである。「他人のために何かを成そうという人間は『独善』としてそれを行うのではなく、他人の痛みや境遇を知った人間でなくてはならないわ。」という言葉をかつてイルーナやアレーナから聞いたラインハルトは自分なりにそれを実行しようと思っていたのだった。
その話題は、軍事、経済、社交、趣味、料理等幅の広いものであった。ラインハルトはこの集まりをするにあたってただ一つ決まりを設定していた。「すなわち階級による遠慮は不要。階級による威圧はしてはならない。ただ自己の矜持と羞恥、尊敬の情により相手に敬意をもって接すること。」である。
 その決まりは出席者たちに驚きをもって受け止められたが、話が重なるにつれ誰もが自分の意見を素直に言えるような環境になっていった。
 もっとも、こんな破天荒なことはラインハルトの旗艦でしかできないのは当たり前のことである。大貴族の長たるブラウンシュヴァイクやリッテンハイムはたとえ天地がひっくり返っても自ら進んで平民と席を同じくしないだろう。


「武田信玄みたいなことをするわね〜。」
とアレーナがいたら言ったかもしれない。


そんな折、ラインハルトは麾下の提督たちを召集して談笑していた。談笑と言っても中身は今後の戦略方針や今回の和平交渉の事である。
「で、ミューゼル大将。今回はどうなるんですかねぇ?」
ザイデル軍曹が皆に飲み物を注いで回りながら尋ねる。彼はロルフともども実家の工場を継ぎたいと思っていたのだが、それがいまだにかなってはいなかった。だが、ラインハルトの麾下に配属された時、兄弟どちらかなら便宜を図れるとラインハルトから言われ、弟のロルフを退役させる代わりに自分がブリュンヒルトの乗組員としてラインハルトの身の回りの世話をすることを進んで希望してきたのである。いわば「従卒長」の役割を果たすことになったのだった。ラインハルトがしたことは数百万の麾下の士卒の願望に対するほんの砂粒程度の物なのかもしれないし、あるいはえこひいきだったのかもしれない。だが、だからと言って何もしない人間でいるよりは数歩でも進んだことをしたいと彼は思っていたのである。
「そうだな、卿にわからないなら、俺にもわからないな。」
「茶化さないで下さいよ。兵卒からのたたき上げの俺たちには難しい話なんてわかりませんや。」
ラインハルトは微笑しながら、注がれたノンアルコールカクテルを一口飲んだ。まだ勤務中なので酒はご法度である。
「そう言うな。食わず嫌いはよくないというぞ。卿らも少しは勉強してみろ。歴史という奴をな。そうすれば今回の事もあな
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