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百人一首
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第二十首

第二十首  元良親王
 あの人とのことが知られてしまった。それも一人ではなく世間に。もう宮廷はおろか都中でそのことを噂せぬ者はいなかった。
「帝もこのことを御聞きになられています」
「左様ですか」
「はい」
 親王は周りの者の言葉を聞きまずは目を伏せた。しかし伏せてもどうにもならないことは他ならぬ親王が最もよく御存知のことだった。
「わかりました」
「どうされますか?」
「悩んでいても仕方ないでしょう」
 親王は目を少し開かれたうえでこう述べられた。言葉は明瞭でそこには迷いがなくなっていた。より確かに言えばその迷いが消えようとしていた。
「それ位なら。私は」
「殿下は」
「会いに行きましょう」
 顔をあげられて述べられた。毅然とした顔になられ。
「あの人に」
「ですがそれは」
「いいのです。私は決めたのです」
 周りの者達の制止も今は聞かれなかった。
「今の気持ちを。歌にして」
 さらに今のお気持ちを歌にされるのだった。その歌は。

わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身を尽くしても 逢はむとぞ思ふ

「この気持ちです」
「そうですか。そこまで」
「はい。ですから牛車の用意を」
 今まさに出て行かれるのだった。その御自身のお気持ちのままに。その想い人のところに。例え何があろうと愛を貫かれると決意されて。


第二十首   完


                2008・12・18

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