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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十話 軋轢
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いが敵の水雷戦隊を追い払うのは軽巡や駆逐艦娘でもできる仕事だ。だが、戦艦以上を相手取るとなると、それは戦艦にしかできない。あるいは正規空母がな。であるならばそれらの相手は相応の奴らに任せておけばいい。我々は我々にしかできないことをするべきだろう。違うか?」
「でも、それはある意味で差別のように聞こえるわ。だって――」
「悪いけれど、私も今の議論に関しては尾張の言葉に賛成かな。」
4人は一斉に振り返った。壁にもたれて4人の話を聞いていた、梨羽 葵だった。
「憎たらしいあの子の言葉はこの際おいておくとして・・・・。」
葵は壁から身を起すと、4人に近づいてきた。
「突然だけれど、前世の日本海会戦、その前の黄海海戦のこと、聞いたことある?」
突然の質問に4人は顔を見合わせあったが、しばらくして大和が答えた。
「あ、はい。確か黄海海戦は日露戦争における制海権争奪戦前半の最終決戦でした。ロシアの太平洋艦隊を戦艦の数で劣る日本艦隊が破って勝利した戦いです。あの時は敵の旗艦司令塔付近に砲弾が命中して、敵の司令長官を戦死させたのが勝因と聞いています。」
葵はうなずいた。そしてその次は?というように促した。大和に代わって陸奥が口を開いた。
「日本海海戦は日露戦争の最終決戦ともいうべき戦いでした。ロシアが第二太平洋艦隊、通称バルチック艦隊を回航させ、これを日本艦隊が迎撃するという図で、双方の海軍が死闘を繰り広げた戦いだったと聞いています。そして、その勝利はまさに完全に近いものだったとも。」
「二人ともまぁまぁ正解よ。でも、肝心なことが抜け落ちているわ。」
「それは?」
葵は笑みを引っ込み、突然怒ったような息の吐き出し方をすると、4人を真正面から睨んだ。


「連合艦隊旗艦が全艦隊の先頭に立って敵の砲火を浴びたことよ。」


すばりとさしこまれた言葉に、4人は声にならない動揺をあらわにした。
「あなたたちも前世で連合艦隊旗艦を務めたんでしょう?それがどうよ。あなたたち、前世も含めてだけれど、一度だって全艦隊の先頭きって砲火を浴びに進んで出たことがあった?進んで。」
「それは・・・・。」
「あの時の連合艦隊旗艦は三笠だったけれど、戦いが終わって帰投した時には数十か所の命中弾を受けていたわよ。連合艦隊司令部幕僚だって多数負傷したんだから。」
「あの・・・・。」
「私はね、別に戦艦には戦艦の役割があることを否定してるんじゃないの。けれど、戦艦が他の艦種に比べて偉いとか、戦艦が主力だから後生大事だって考えてるんだったら、とんでもない勘違いだわ。」
葵は今度はやるせなさの詰まったため息を吐いた。
「東郷閣下は今のあなたたちの考えを知ったら、きっと怒るわよ。ものすごく。あの人はね、旗艦艦上で敵の砲弾の飛び交う真っ只中を動かずに終始戦闘指揮をし
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