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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十四話 十月十五日
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平民の権利の拡大を行なう事とする」

「馬鹿な、そのような事許されませんぞ!」
「課税に農奴の廃止等、一体何をお考えなのか」
「ルドルフ大帝以来の国是を否定するつもりか」

「宇宙を統一するためです」
貴族達の反発する声を押さえたのはヴァレンシュタイン元帥だった。

「銀河帝国成立時、一部の反乱者が帝国を脱し自由惑星同盟を建国しました。理由は帝国が市民の権利を踏みにじったためです」
「無礼な、ルドルフ大帝への非難は許さんぞ」

ブラウンシュバイク公がヴァレンシュタイン元帥を咎めた。貴族達の間で頷く人間がいる。しかしヴァレンシュタイン元帥は気にとめることもせず話し続けた。

「その結果が百五十年に及ぶ戦争です。帝国は最盛時三千億人の人間がいました。しかし、今では十分の一にも満たぬ人間しかいません。戦争が人口減少の原因の全てではありませんが一因である事は事実です」
「……」

三千億の人間、それが十分の一にも満たない……。その事実に誰もが口を噤んだ。静まった黒真珠の間にヴァレンシュタイン元帥の言葉が流れる。

「帝国が変わらぬ限り、自由惑星同盟を制圧しても彼らは服従しないでしょう。そして今度こそ彼らは本当に反乱者になる。場合によっては第二の自由惑星同盟を建国するかもしれません。これ以上の戦争を防ぐために帝国は変わらなければならないのです」

「そのような事は認めん。反乱を起すなら鎮圧すれば良いのだ。平民などのために何故我等が犠牲にならなければならぬ。ふざけるな!」
噛み付くような勢いで反対したのはカルナップ男爵だった。目は血走り、全身が震えている。多くの貴族達がその意見に同意する言葉を上げる。

「何か誤解が有るようですね、カルナップ男爵」
「何が誤解だ! ヴァレンシュタイン」
敵意を剥き出しにするカルナップ男爵に対しヴァレンシュタイン元帥は冷笑、或いは嘲笑だろうか、笑みを浮かべながら答えた。

「陛下は改革の是非を相談しているわけではありません。改革を行なうと仰っています。これは決定事項なのです」
「!」
決定事項、その言葉が黒真珠の間に響く。

「カルナップ男爵、御不満ならば自領へ戻られては如何です」
「領地へ戻れだと?」
「そうです。兵を整え、反乱の準備でもすればよいでしょう。宇宙艦隊はいつでも出撃の準備は整っていますが、反乱を起す程度の時間は差し上げますよ」

ヴァレンシュタイン元帥は冷たいと言って良い視線でカルナップ男爵を見据えた。蒼白になり口籠もる男爵から視線を外すと黒真珠の間を見渡し言葉を発した。

「カルナップ男爵だけではありません。この黒真珠の間に列席の方々に申し上げる。陛下の御意志に従えぬというのであれば反逆者ということになります。領地に戻られ反乱の準備をされたほうが
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