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Element Magic Trinity
×××だと、彼女は―――
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「砂煙……―――――ビックマウスか!」

そう叫ばれるのを待っていたかのように、黄土色をした巨大な芋虫は地中から笑うような鳴き声と共に飛び出した。背を硬い殻で覆ったビックマウスは、まず手近なミラへと襲いかかる。
がばっと開いたその名通りの大きな口からびっしりと並んだ牙が覗いて、反射的に接収(テイクオーバー)を発動するミラの前を、

「オラ…よっ、とおおおお――――!」

燃える炎の剣が飛び抜けた。
何事かと確かめるまでもなくそれはアルカの仕業で、丁度手元に用意した剣を勢いに任せてぶん投げたらしい。本来なら投げるのには向かないサイズな上にそもそも投げて使うものではないが、咄嗟だったのと距離の問題だろう。走ってミラの前に立って防ぐより、今の地点から投げた方が幾分か早い。序でに相手の武器はその口な訳で、剣で防ぐのは些か難しいように思えた。
距離云々とはいえ、それはせいぜい台車を挟んでいた程度である。ミラの斜め左後ろから飛んだ一撃は、相手が身を起こしていた為に殻のない腹に命中し、そのまま一気に全身を燃やしていく。

「間に合った、よな?…おいミラ、大丈夫か!?」
「見ての通り無傷だよ!」

声を返せば、ほっとしたような溜め息の音が聞こえた。
全身を焼かれながらも悲鳴すら笑い声のようなビックマウスを不気味に思いながら、「安心してる場合かよ」と呟く。

「私達を狙ってんのは、アイツ一匹じゃないんだぞ!?」
「解ってるって。まあ軽く両手じゃ足りない数ってトコか」

本当に解っているのか不安になってくるほどいつも通りなアルカの言う通りだ。
近づいてくる砂煙は十以上。聞こえる鳴き声は何重にもなっていて解りにくいが、結構な数だろう。それが二人と台車を囲むように全方位から向かってくる。

「しかも相手は地面に潜ってて、何かあれば隠れちまえば追えねえもんなあ」
「おまっ…本当に解ってんのか!?今結構なピンチなんだぞ!?」
「おー、そうだな」

そう言いながらもアルカの顔には笑みが浮かんでいて、敵に囲まれているという状況すら忘れて頭を抱えそうになる。ミラもアルカも、ギルドでは将来有望なS級候補とされているが、だからといってどんな相手でも確実に勝てるのかとなれば頷く事は出来ない。これが歴代最年少のS級魔導士たる青髪の彼女ならあっさり頷いて見せたかもしれないが。

「くそっ…」

悪態をつきながら、一つ覚悟を決めた。
今ここにいるのは二人だけ。唯一頼れるアイツは危機感の“き”の字もないような態度で、頼りになるとは正直思えない。けれど、それではつまり十数、下手すれば数十のビックマウス相手にミラが一人で挑む事になる。
逃げられるとは思っていない。だからこそ、ミラは唾を呑み込んで全身に魔力を巡らせた。

(倒せるだけ倒す
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