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憑依貴族の抗運記
第2話、愚痴パーティー
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爵邸の玄関に向かった。

 そこで招待客を受け付けている、ミュンツァー伯爵家の執事と私設警備隊隊長から歓迎の挨拶を受ける。

「リッテンハイム侯が既にいらしているようです」

 アンスバッハは伯爵の使用人二人と短く会話をして情報を仕入れ、俺と伯父爺さん貴族に耳打ちした。

 リッテンハイム候を含めて既に千人以上の貴族がミュンツァー伯爵の絵画鑑賞パーティーに参加しているらしい。さながら新無憂宮の中心がそっくりとミュンツァー伯爵邸に移ったような様相である。

 外の警備を担当する銀河帝国軍の憲兵隊大佐があれほど疲れた表情をするわけだ。我が儘な連中が連隊規模で押し寄せている。

 ミュンツァー伯爵も相当困惑しているだろう。客のほとんどは伯爵の絵などそっちのけでラインハルトへの悪口に興じて騒いでいるのたがら。

 とはいえ同情する気にはなれない。伯爵の挨拶を直接受ける予定の俺は全く興味の無い絵画の鑑賞を避けられない。むしろ俺が同情して欲しい立場だ。

「素晴らしい絵だ」

 アンスバッハと途中で別れた俺とはミュンツァー伯爵の案内で彼の描いた絵を次々と鑑賞していく。

 これが意外と下手くそな絵で驚いた。芸術にうるさいブラウンシュヴァイクとリッテンハイムに招待を出している以上、てっきり上手慣れくらいはしていると思っていた。

「お褒めに預かり光栄です。よもやブラウンシュヴァイク公に来て頂けるとは思いもよりませんでした。とても公をおもてなしできる場所ではありませんが、どうぞごゆるりとお過ごし下さい」

「そうさせて貰おう」

 義務を果たして中庭に出ると、一仕事を終えたアンスバッハが合流してきた。

「ブラウンシュヴァイク公。所望の人物を五人ほど見つけました」

 俺が伯爵のそこそこ上手な絵を見ている間、側近のアンスバッハはパーティー会場を巡って貴族達の話を聞いていた。

「ほう。誰から声をかけるべきかな」

「グラバック男爵はフレーゲル男爵の従兄弟になります。つまりブラウンシュヴァイク公爵の親戚でありますから、これからずっと側に置いても不思議ではないでしょう。それからハノール子爵です。公爵が反逆者クロプシュタットを討伐して元帥に昇進した栄光の戦いで負傷をしています」。

 アンスバッハに名指しされた二人の貴族は、ラインハルト個人への怒りで一杯の絵画鑑賞パーティー会場において、三長官に強い怒りをあらす少数派だ。

 そんな人物を俺の近くに置き続けて好きに喋らせたら、それなりの貴族達に三長官への怒りが伝播していく、と期待している。

 そして、それから数時間にわたって俺は貴族達のラインハルトと三長官に対する暴言演説を聞き続けた。

 興奮した貴族の喚き声をずっと聞いていると、選挙演説という名で政党名と候補者名を連呼する騒音集団のことを思い出す。

 決して耳に心地よい物で
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