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11年目の春
少年探偵団
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よ!!」
 行きかう車の間から覗くのは黒いパーカーにニット帽姿の男。
 「逃がすかよ。」
 「ちょっと、工藤くん!」
 止める灰原に目もくれずコナンは歩道橋を駆け上がった。男はひったくった鞄を両手で胸に抱えながら、どんどんと遠ざかって行く。階段を駆け下りながらコナンは辺りを見回した。すると背後を振り返りながら走り去る犯人の前から見覚えのある背広姿の男性がのんきにあくびをしながら歩いて来ていた。コナンは思わず叫んだ。
 「高木刑事! そいつ捕まえてください!!!」
 「え、えぇぇ!」
 偶然通りかかった張り込み帰りの高木刑事に捕らえられた犯人はしばらくして駆けつけた犯人によって連行されていった。走り去るパトカーを満足げに見送るコナンに灰原は鋭い視線を送る。
 「相変わらずね、名探偵さん。」
 「まぁ、今回は何もしてねぇけどな。」
 そう言って背後に立っている高木刑事を振り返った。
 「助かりましたよ、高木刑事。ナイスタイミングでしたね。」
 ニコリと笑うコナンに高木刑事はため息をついた。
 「やっと二日ぶりに家に帰るところなんだから、邪魔しないでくれよ……。」
 「あら。刑事の言葉とは思えないわね。」
 灰原の嫌味に高木刑事は再びため息をついた。
 「あ、そう言えば、佐藤刑事は元気にしてるんですか?」
 「江戸川くん。」
 灰原が短くそう言うと、コナンは何かを思い出したように訂正した。
 「奥さん、元気にしてるんですか?」
 奥さんという言葉に顔を真っ赤にする高木刑事は、とても結婚八年目で、今年小学校に上がる子供がいるとは思えないほどに、その反応はとても初々しかった。そんな高木刑事に呆れ顔のコナンと灰原に誰かが背後から声を掛けてきた。
 「また、何か厄介事に巻き込まれているんですか?」
 聞き覚えのあるその声に、二人は振り返った。そこには光彦、歩、元太が立っていた。
 「コナンくんらしいね。」
 「コナンは事件を呼ぶ根っからの探偵なんだよな。」
 そう言って笑いあう少年探偵団の三人は今や世間では人気者であった。その推理力、そしてその人気はかつて東の高校生探偵とうたわれた工藤新一にも引けを取らないほどだと言われていた。それもそのはず。この少年探偵団の知恵袋は江戸川コナンに姿を変えたかつての名探偵なのだから。平たく言えば、隠れ蓑を小五郎から少年探偵団に鞍替えしたということ。
 「おめーら、ずいぶん早いんだな。歩や光彦はともかく……。」
 「何言ってるの?」
 「そうですよ。今日も遅刻ギリギリですよ。」
 光彦はそう言って腕時計に視線を落とした。灰原も自分の時計で時刻を確認すると、コナンの前に澄ました顔でそれを突き出した。上下逆さになったその時計によく目を凝らす。
 「何だよ、もうこんな時間じゃねぇか!」

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