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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十八話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その4)
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「済まぬ、卿らの献身に感謝する。さらばだ」
俺は震えながらも彼らに礼を言った。一人一人の顔を懸命に見る。お前たちを死なせてしまう男の顔だ。この馬鹿者の顔をしっかりと見てくれ……。

答礼を解く。彼らも礼を解いてくる。スクリーンが切れるまで俺は彼らを見詰め続けた……。


■ 帝国暦487年4月24日 20:30  特設任務部隊旗艦 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー


敵の本隊が撤退していく。あの中にローエングラム伯がいるのだろう。もう少しだった。もう少しで息の根を止める事が出来た。増援部隊がきたということは、ヴァレンシュタイン大将が手を打ったということだろう。

こちらの動きを見抜いたのか? それとも偶然か? いや偶然は無いな。こちらの動きに不自然さを感じ取ったのだろう。それがあの増援になった。やはり簡単に倒せる相手ではないか……。

「閣下、ローエングラム伯は討ち漏らしましたが、イゼルローン要塞を奪取し、敵に大打撃を与えました。大勝利です」
ムライ参謀長が話しかけてくる。私が沈黙しているので心配しているらしい。

私の後ろでシェーンコップ大佐が“司令官は勝っても嬉しそうじゃない”などと言っている。そうじゃない、勝っていないから嬉しくないんだ。誰にも言えないことだが……。それと人の死をこんなに願う自分が、戦闘が終わると嫌になるんだ。



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