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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十九話 信賞必罰(その2)
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■ 帝国暦487年1月29日 軍務省 尚書室  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン

「それはできぬ。退役は既に決めたことだ。卿の言うとおり周囲がなかなか認めまい。そこで、副司令長官に信頼の厚い人物を当てようと思う」
なるほど、若い司令長官を支える老練な副司令長官か……。悪くない、メルカッツを持ってくる気だな。

「名案だと思います。恐れ入りました」
「卿もそう思うか、では副司令長官を頼むぞ」
「?」

何だ? ミュッケンベルガー元帥は何を言った? 意味がよくわからん、頼むぞって何頼むんだ? 誰かの名前言ったか? 何でこいつら人の悪そうな笑顔をしてるんだ。……お前ら正気か?

「あの、副司令長官はどなたでしょう、良くわからなかったのですが」
確認しろ、念のため確認するんだ。
「卿が副司令長官になる」

あっさり言ったな、ミュッケンベルガー。俺が副司令長官? ラインハルトの下で? 虐めか? ここは拒否の一手だな。大体階級はどうすんだ? 少将なんて総参謀長にもなれん。

「……小官は先日降格されまして少将ですが」
「ああ、本日付で大将になる。二階級昇進だ」

エーレンベルク元帥、あっさり言ったな。お昼のランチを頼むのより軽かったぞ。正気か? いかん、こっちも本腰を入れて拒否だ。爺様連中の手強さはわかっている。油断するな、エーリッヒ。

「信賞必罰は軍のよって立つところです。小官は先日降格されたばかり。意味の無い昇進は軍の統制を乱すと思います。それに本来、宇宙艦隊司令長官は元帥の地位に在る方が就くものです。ミュッケンベルガー元帥閣下のお考えは判っておりますゆえそれには異を唱えません。であればこそ副司令長官には尚更老練で人望厚い方を選ぶべきではないでしょうか?」

うん。上手く言えたぞ。二人ともグーの音も出まい。俺は将来は弁護士か官僚になるのだ。両方とも弁が立たなければ成功なんぞ出来ん、完璧だ。参ったか。

「卿の言うとおり、信賞必罰は軍のよって立つところだ。それゆえ卿に一階級降格という罰を与えた。今度は賞を与えねばなるまい」
賞? エーレンベルク元帥、何を言っている。俺は戦場に出ていないぞ。

「今回の戦いで活躍した、二個艦隊の編成は卿が行なったそうだな」
「はい」
「各司令官達それとミュッケンベルガー元帥に代わって全軍を指揮したメックリンガー少将だが、卿の推薦だそうだな」

「……そうですが」
いやな予感がする。目の前の二人は嬉しそうな顔をしている。ウサギを見つけた狼みたいな表情だ。俺をどうやって嵌める気だ、絶対逃げてやる。

「若く有能な司令官達を抜擢したことは真に見事だ。彼らのみ昇進して抜擢した卿が昇進しないのはおかしかろう」
「……」
いや、おかしくない。おかしくないから嬉しそうに笑う
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