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SAO−銀ノ月−
第百七話
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「うん……まだ決定じゃないんだけど、母がそう言ってて……」

 なんと実の母に、転校の打診を受けたのだという。確かに言われてみれば、アスナの実家はリズでも知っているような優良企業で、そういう話もあるだろうな――とリズは納得する。とはいえアスナがそれを納得出来る筈もなく、憮然とした表情を隠さずにいた。

「……あの人は自分の世間体が気になるのよ」

「こら。悪いけどあの学校にいるなんて、親なら心配するに決まってるでしょうが」

 SAO事件に巻き込まれた児童たちの学習施設――と言えば聞こえはいいが、実際には危険な児童たちをまとめて監視する施設と同じだ。それは他ならぬ生徒であるリズが一番感じていることでもあるし、彼女本人も、それとなく親や友人から心配されたこともある。優良企業の社長夫人だろうが何だろうが、その行動自体は親ならば当たり前のことだろう。

「でも……」

 ……そんな簡単なことが分からないほどに、アスナは人一倍にVR空間やあの浮遊城、向こうで得た友人達への思い入れが強いのだ。そして不幸なことに、あの生還者学校から抜けだす知性と資金と地位を、アスナは望むことなく備えている。

「うーん……ちなみに、キリトにはそのことは言ったわけ?」

 こう見えてアスナは頑固だ。それをよく知っているリズは、困ったように髪を掻く――手を無理やり止めながら、アスナには切っても切り離せない彼のことを聞く。どうせ言ってないでしょうけど、と思いながらも。

「ダ、ダメだよ! キリトくんにこんなこと……言えない!」

「アスナ……?」

 しかしてアスナの口から放たれたのは、想像以上に荒げられた言葉だった。まさかここまで、強く否定されるとは思っていなかったリズは、驚きに目をぱちくりとさせてしまう。

「……ごめん」

「……ほら、コーヒー冷めちゃうわよ。で、どうして言っちゃいけないわけ? 一緒に悩んでくれそうじゃない」

 自分でも急に叫んでしまったことに気づいたらしく、アスナがばつの悪そうに謝罪する。そんな彼女を落ち着かせるようにコーヒーを勧めながら、リズ本人もあおるように飲んでみせると、すぐさまカップの中が空になってしまっていた。

「……キリトくんが好きな私は、強い私だから」

 そんなリズの様子を見て笑いながら、コーヒーを優雅に飲んでみせて――こんな細かい動作でもリズは少し敗北感を感じざるを得ない――アスナは少し落ち着いたように、静かな口調でそう言ってのけた。

「だから……弱い私は、あんまりキリトくんに見せたくないの」

「…………」

 ――そんなこと構わずあんたにベタ惚れなのくらい、キリト見りゃ分かんでしょうが! ……と、叫びそうになった衝動を、すんでのところでリズは抑える。思うさま言
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