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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
9話 災禍を纏う凶刃
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というらしい。俺も、詳しい事は知らないが………」


 一拍おいて、メイス使いが覚束ない腕で取り出した解毒結晶を踏み砕いた。ゆっくりと、見せびらかすように。

 確かに、剣だけの威力では通用しなかっただろう。
 違わず、剣だけの火力では痛痒ともされなかっただろう。

 それでも、強者を気取った愚か者を真っ逆さまに、恐怖の底に叩き落とすくらいは出来る。


「やっぱり気が進まない。だが、殺し合いは所詮お互い様だ。………悪く思うな」
「………嫌だ………しにたく……ねェ………助け………」


 麻痺毒に冒されながらも絞り出される懇願に、俺は視線を背ける。視界に在ることを拒絶する。
 これ以上、彼等を見ていると罪悪感で押し潰されそうになるが、それでも俺には彼等と戦うしか道が無い。

 そう、俺は自分がどういう人間なのかを理解している。
 自分のエゴの為に大勢を無視できる破綻者という、醜悪な自己の本質を。

――――だが、それでも………


「………待ってろよ、グリセルダさん」


 周囲を青い輝きが包み、破片が宙へと還ってゆく。
 燐光はさながら煉獄の炎のように立ち上り、されど単なるエフェクトであるが故に、端から呆気なく消滅してゆく。まるで、俺を焼き潰すように。
 いや、或いは既に焼灼されているのかも知れない。友人を害する加害者達への憎悪と、その加害者たる彼等の断末魔。人間一人の心が漆黒に染まるまで焼き潰すには、()べられる薪として過分なくらいだろう。

 そして、黒は光の届かない《闇》の色だ。
 輝きから拒絶された終わりの色、染まれば二度と戻れない終焉の刻印。

 ならば、俺はどこまでも堕ちよう。
 堕ちて望みが叶うならば、如何なる魔道さえも甘んじて享受しよう。

 その先に硬直するオレンジプレイヤーを捕捉し、敵陣へと駆け出す。
 迷いはない。一線は既に越えている(俺も彼等と同類に堕ちた)
 友を見捨てる卑怯者か、一の為に多を貪る悪鬼か。
 その境界線の上に否応無く立たされた数時間前から、きっと結論は出ていたのだから。

――――それでも、せめて………


「今、全部終わらせる」


――――どんなに汚濁に(まみ)れても、友達だけは助けたい。

――――殺人者がそんな願いを抱くことは、果たして赦されるだろうか。
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