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『八神はやて』は舞い降りた
第5章 汝平和を欲さば戦に備えよ
第43話 会議は踊る、されど進める
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んだ。
 結果的に二度目の襲撃は杞憂に終わったが、積極的に打って出なかったのが裏目に出ている。弱腰にみえたのだ。
 派閥を失い弱腰な魔王など誰からも支持されない。そこで、手を打ったのが、堕天使と天使からの「支援」だった。


「ま、乗り掛かった舟だ。このままむざむざ沈めるわけにはいかねえんだよ」
「いま悪魔に倒れられては困ります。せっかく結んだ和平を反故にするつもりですか?」
「それでも助かった。いまや私は天使と堕天使の侵略を単身防いだ『英雄』だからな」


 『支援』とは、いわゆるヤラセだ。天使と堕天使が連合して国境に兵を集結する。そこに魔王が単身乗り込んで撤退させる。事情を知らない者がみれば、確かにサーゼクスは英雄かもしれない。そして、皮肉る。


「それに、反故にするのは我々悪魔ではなく、天使と堕天使の強硬派だろう」


 嫌そうな顔をするアザゼルとミカエルだが、言葉を返さないのが事実を物語っている。
 咳払いを一つすると、アザゼルはこれからが本題だ、と前置きしてから尋ねた。


「禍の団の情報は集まってるのか?」
「正直芳しくない。いまわかっているのは、旧魔王派、英雄派、ヴァーリ・チームなどの派閥に分かれていること。数では旧魔王派が、質ではヴァーリ・チームが、その両方をもつのが英雄派だということと、一部の主要なメンバーくらいだな」
「こちらも報告を受けています。ヴァーリ・ルシファーの戦力についてはアザゼルからも報告を受けています。問題は英雄派ですね。曹操、ジャンヌ・ダルク、ヘラクレス、ゲオルグそして―――――アインハルト・ストラトス」


 アインハルト・ストラトス。竜王タンニーンを完封できるほどの実力者。英雄派に属しているが、何の英雄なのか見当もつかない。そもそも英雄ですらないのかもしれない無名の実力者。銀髪オッドアイで言動を含めて中二病くさい痛々しいやつ。


 情報が錯綜していて疑心暗鬼になっている。彼女は悪魔だったとか、堕天使だったとか、もともと天使だったとか。ナメック星人で願いをかなえてくれるだとか。レッドリボン軍が秘匿していた人造人間だとか。彼女の扱いを中心に会議は進み――踊る。
 もともと敵同士。薄氷を踏むような協定は、徐々にひび割れ、理念は歪んでいく。会議は踊る――無理に前へと進みながら。その先の共存共栄を信じて。全面戦争の先にある滅亡という未来がちらつくのだから。どんなに無様であろうと。踊りながらも進むしかないのだ。


 ―――――計画通り。どこかで風の癒し手が薄く嗤った。
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